【レポート】第1回新たな社会的養育の在り方に関する検討会
7月29日、厚生労働省省議室で「新たな社会的養育の在り方に関する検討会」の初会合が開かれた。児童福祉法等の改正に基づく今後の養子縁組や里親委託、小規模グループケアの在り方など、新たな子ども家庭福祉を見据えた議論が始まった。
6月3日に公布された「児童福祉法等の一部を改正する法律」では、3月10日にまとめられた「新たな子どもと家庭福祉のあり方に関する専門委員会」の提言に基づき、児童福祉法、児童虐待防止法、母子保健法などの一部を改正した。改正法では児童福祉法の理念を明確にし、母子健康包括支援センターの全国展開、市町村および児童相談所の体制強化、里親委託の推進などを盛り込んでいる。
改正法を踏まえ、積み残しの課題などを検討するため、7月下旬からは4つの検討会・ワーキンググループが始まっている。「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会」(7月25日に初会合)は、要保護児童を適切に保護するための裁判所の関与や、特別養子縁組制度の利用促進などについて検討する。「子ども家庭福祉人材の専門性確保ワーキンググループ」(7月29日に初会合)は、児童福祉司等に義務付ける研修の内容・実施体制などが検討課題。「市区町村の支援業務のあり方に関する検討ワーキンググループ」(8月8日に初会合)は、市区町村が児童等に対する必要な支援を行うための拠点機能の在り方など、市区町村の支援業務の具体的な内容などについて議論する。
7月29日に初会合を開いた「新たな社会的養育の在り方に関する検討会」は、2011(平成23)年7月にまとめられた「社会的養護の課題と将来像」を全面的に見直し、新たな社会的養育の在り方について検討するとともに、他の検討会・ワーキンググループの進捗状況を把握し、新たな子ども家庭福祉の実現に向けた制度改革全体を鳥瞰する役割も担う。座長は奥山眞紀子氏(国立研究開発法人国立成育医療研究センター副院長、ここの診療部長)。
検討事項は、①改正児童福祉法等の進捗状況を把握するとともに、「新たな子ども家庭福祉」の実現に向けた制度改革全体を鳥瞰②改正児童福祉法を踏まえた社会的養育の考え方、家庭養護と家庭的養護の用語の整理・定義の明確化③②を踏まえた地域分散化も含めた施設機能の在るべき姿④里親、養子縁組の推進や、在宅養育支援の在り方、これらを踏まえた社会的養育体系の再編⑤②~④を踏まえた都道府県推進計画への反映の在り方⑥児童福祉法の対象年齢を超えて、自立支援が必要と見込まれる 18 歳以上(年齢延長の場合は 20 歳)の者に対する支援の在り方。
冒頭のあいさつで塩崎恭久厚生労働大臣は「(検討会には)新しい子ども家庭福祉を考える制度全体に目配りする役割をお願いする。子どもの命と権利、未来をつくり上げていくことを念頭に入れながら議論を深めてほしい」と話した。
用意された資料では、法改正後の進捗状況を①理念②子どもの権利擁護に関する仕組み③国・都道府県・市区町村の責任と役割④要保護・要支援児童の対象年齢⑤新たな子ども家庭支援体制の整備⑥職員の専門性の向上⑦社会的養護の充実強化⑧統計⑨その他――に分けて整理した。そのうち同検討会での議論は⑦社会的養護の充実強化が中心となるが、他の検討会・ワーキンググループの議論などを踏まえ、この分類に従って進捗状況を確認していくことになる。
意見交換では、改正児童福祉法の「継続的」という表現(第三条の二 児童が家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育されるよう‥‥必要な措置を講じなければならない)が議論になった。欧米で使われているpermanency(永続的なもの)とも比較しながら、言葉が真に意味するところや表現の適否について、意見が交わされた。奥山座長は「子どもを場当たり的に里親に預け、子どもには何も言わないということが起きている。子どもの側のニーズに立った継続性という考えを明確に打ち出していくことが重要」と話し、継続性に関する議論が必要との認識を示した。
そのほか、「当事者の話を聞く場を設けてほしい」「ゲートキーパーの役割を担う部署、人が必要ではないか」「ショートステイ、レスパイトサービスに子どもの視点を」などの意見が述べられた。母子保健に関わることでは、「要保護児童対策地域協議会が関わるケースは母子保健の中で保健師が既に関わった情報を基にしている。保健師が培ったものを使って次に進むというイメージにしてほしい」との声が聞かれた。
今後は当事者や関係団体へのヒアリングも行いながら月1回程度開催し、他の検討会・ワーキンググループの進捗を見ながら議論を進めていく予定。
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