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【レポート】第1回地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会(地域力強化検討会)

10月4日、厚生労働省の「第1回地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会(地域力強化検討会)」の初会合が開かれ、今後の論点などについて確認した。

昨年9月に公表された厚生労働省の「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」では、新しい地域包括支援体制構築(包括的な相談支援システムの構築、高齢、障害、児童等への総合的な支援の提供)の方向性が示された。これに基づき、平成 28 年度予算においては、単独の相談支援機関では十分に対応できない、制度の狭間の問題を解決する観点から、「多機関と協働した包括的相談支援体制構築事業」が創設された。同事業は複合的な課題を抱える者等に対する包括的な支援システムを構築するとともに、高齢者などのボランティア等を活用し、地域に必要とされる社会資源を創出する取り組みをモデル的に行うもので、26自治体において実施されている。

また、今年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」では、子ども・高齢者・障害者など全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる「地域共生社会」の実現を掲げている。

これらを受けて7月15日には厚生労働大臣を本部長とし、同省部局長を本部員とする「『我が事・丸ごと』地域共生社会実現本部」が発足。「他人事」になりがちな地域づくりを地域住民が「我が事」として主体的に取り組む仕組みを作るととともに、市町村において地域づくりの取組支援と公的な福祉サービスへのつなぎを含めた、「丸ごと」の総合相談支援の体制整備を進めている。地域力強化検討会は、同本部の下にある3つのワーキンググループ(地域力強化、公的サービス改革、専門人材)のうち、地域力強化ワーキンググループと関係し、住民主体による地域課題の解決力強化・体制づくり、市町村による包括的相談支援体制等について検討を行う。座長には原田正樹氏(日本福祉大学社会福祉学部社会福祉学科教授)が選出された。

塩崎恭久厚生労働大臣は冒頭のあいさつの中で、「高齢者も、若い人も、障害を持っていてもいなくても、難病を持っていてもいなくても、失敗した人もしたことのない人も、皆それぞれの能力を使って働けるインクルーシブな社会をつくっていく」と地域共生社会の理念を語り、「そのためには、縦割りの福祉ではなく、まるごとの新しい福祉の考え方を再構築していく。そのベースとなるのは地域の力。あらためて地域力をどうつくっていくのかを議論していただきたい」と検討会の議論に期待を寄せた。

事務局は以下の6つの論点を示した。
① 今後の福祉ニーズを踏まえて、住民の立場から見て「目指すべき地域」とはどのようなものか
② なぜ「小中学校区等の住民に身近な圏域で、住民が主体的に地域課題を把握して解決を試みる体制」が必要なのか
③ 「目指すべき地域」のために、地域においてどのような機能が必要か
④ 多機関の協働による包括的支援体制をどのように作っていくか
⑤ 地域において課題を解決するための取組の一環として「寄附文化の醸成」をどのように考えるべきか
⑥ 地域課題の解決力強化と総合的な相談支援体制づくりを全国展開するうえで留意すべきこと等は何か

この日は論点について各構成員が事前に用意した資料に基づき発表した。堀田聰子構成員(国際医療福祉大学大学院教授)は「いままでの共生は福祉の切り口から論じられることが多かったが、あらためて地域経済の循環を含めた共生ということを広く捉えていく必要がある」と問題提起し、具体例としてフード、エネルギー、ケアの自給圏を目指し、多様な主体の参加と連携による持続発展が可能な共生の仕組みである「東近江 魅知普請(みちぶしん) 曼荼羅」を紹介。「地域経済の循環、コミュニティー経済も考えながら生産のコミュニティーと生活のコミュニティーを再び融合するという視点で捉えていくことを通じて、全ての人が出番のある地域につなげていけるのではないか」と話した。

大原裕介構成員(社会福祉法人ゆうゆう理事長)は、福祉の理念だけでは住民が集まらなかった経験から、それぞれの立場で「我が事」と思ってもらえるような提案が大切であることに気付いたという。地元の商工会や建設業者を巻き込み「福祉にコミットすることで商売も潤い、雇用も確保できる」と説得して回ったことを話した。また、共生社会を支える人材については「当て職として専門職を置いてもたぶん機能しない」と指摘。機能を動かすためにどういう人が要るかという論点に立ち、カリスマを育てるのではなく、おしなべて底上げできるような人材をいかに育成するかの議論が必要」と話した。

論点①についての意見交換では、「地域とつながりがあることを前提にするのではなく、地域とのつながりのない人たちをどうするかの仕組みが必要」「『我が事』の捉え方は狭義に限定せず多様なものでいい。(地域共生社会に)興味のない住民からも話を聞いてみたい」「福祉のプロとしてではなく、『自分はどんなまちに住みたいか』という素直な気持ちで話を進めるべき」など、あるべき論ではなく本当の住民目線に合わせた議論が大切という意見が相次いだ。座長は「多様性を大事にしながら国全体としての共通項をいかに探し出すか、次回以降、議論を深めていきたい」と話した。

今後は第2回、第3回の会合で論点についての議論を行い、第4回の会合で中間報告に向けてとりまとめの議論に入る予定。

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