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【レポート】第2回児童発達支援に関するガイドライン策定検討会

2016(平成28)年12月26日、厚生労働省の「第2回児童発達支援に関するガイドライン策定検討会」(座長=大塚晃上智大学総合人間科学部教授)が開かれ、ガイドラインの案が示された。

児童発達支援に関するこれまでの流れとガイドラインについて

12(平成24)年度の児童福祉法改正で、それまで障害種別で分かれていた施設体系が、通所による支援(障害児通所支援)と入所による支援(障害児入所支援)に一元化された。また、通所による支援の実施主体は都道府県と市区町村に分かれていたが、市区町村に統一。学齢児を対象とした「放課後等デイサービス」と障害があっても保育所等の利用ができる「保育所等訪問支援」が創設され、通所による支援サービスは▶児童発達支援▶医療型児童発達支援▶放課後等デイサービス▶保育所等訪問支援の4つとなった。このうち利用児童数が最も多い放課後等デイサービスについては、既に15(平成27)年4月に「放課後等デイサービスガイドライン」が策定されている。

児童発達支援に関するガイドライン策定検討会は、放課後等デイサービスに次いで利用児童数が多い児童発達支援について、事業所で行われている支援方法や質にばらつきがある現状を踏まえ、ガイドラインで提供すべき支援の内容を示し全国共通の枠組みを提供するのが目的。16(平成28)年11月28日に開かれた初会合では、児童発達支援の現状や放課後等デイサービスガイドラインの内容などを振り返り、意見交換を行った。

関係団体からの提言

2回目の会合であるこの日は、初めに相談支援専門員協会副代表の橋詰正参考人からヒアリングを行った。橋詰参考人は、児童発達支援事業所と障害児相談支援事業所の連携のあり方について提言。児童に対する支援の入口での連携を始めとして、障害児利用支援計画と個別支援計画との連動、サービス担当者会議とモニタリングの連携、事業所から卒業していく出口での連携が大切であると強調した。

橋詰参考人の提言に対して田中正博構成員(全国手をつなぐ育成会連合会総括)は、「医療的ケアが必要な児童に対しては、行政、特に保健師の関わりがガイドラインに盛り込まれないと、市町村が相談支援専門員に託していく方向になり、(相談支援員の)役割が薄まってしまうという危惧がある」と指摘した。これに対して、橋詰参考人は「医療的ケアが必要な児童に関しては、現状では入口の段階で福祉サービスに頼るようなケアマネジメントをしているため、親や家族が相談支援専門員を頼りにはしていない。今後は、医療や訪問看護なども含めたケアマネジメントができるような、より専門性を持った相談支援専門員の育成をビジョン化していくのが協会としての大きな課題」と話した。北川聡子構成員(公益財団法人日本知的障害者福祉協会理事)は「子育て世代包括支援センターや地域子ども家庭支援拠点と相談支援専門員がつながる仕組みをつくることで、障害のある子どもも障害のない子ども含めて、入口の所で相談支援ができるのではないか」と意見を述べた。

児童発達支援ガイドラインの構成案

この日、事務局は児童発達支援ガイドラインの構成案を提示した。内容は以下のとおり。

第1章 総則
1 目的
2 障害児支援の基本理念
(1)障害児本人の最善の利益の保障
(2)地域社会への参加・包容(インクルージョン)の推進と合理的配慮
(3)家族支援の重視
(4)障害児の地域社会への参加・包容を子育て支援において推進するための後方支援としての専門的役割の発揮
3 児童発達支援の役割
4 児童発達支援の原則
(1)発達支援の目標
(2)発達支援の内容
(3)発達支援の環境
(4)発達支援の社会的責任
5 子どもの発達

第2章 提供すべき支援の内容
1 発達支援
(1)支援内容(例)
①健康・生活
②運動・感覚
③認知・行動
④言語・コミュニケーション
⑤人間関係・社会性
(2)支援に当たっての配慮事項
※知的障害、発達障害、肢体不自由児、視覚障害、聴覚障害、重度心身障害、難病、医療的ケアが必要など、障害ごとに特に配慮すべき事項
2 家族支援
(1)支援内容
(2)支援にあたっての留意事項
3 地域支援(連携を含む)
(1)支援内容
(2)支援にあたっての留意事項
4 移行支援
(1)支援内容
(2)支援にあたっての留意事項

第3章 児童発達支援計画の作成及び評価
1 相談支援との連携(障害児支援利用計画との関係)
2 個別支援計画の作成及び評価

第4章 関係機関との連携
1 母子保健や医療機関等との連携
2 併行通園先との連携
3 他の児童発達支援センターや児童発達支援事業所等との連携
4 学校や放課後等デイサービス事業所等との連携
5 協議会等への参加や地域との連携

第5章 支援の提供体制
1 職員配置及び職員の役割
2 施設及び設備
3 定員
4 衛生管理及び安全管理
(緊急時の対応を含む。)

第6章 支援の質の向上と権利擁護
1 支援の質の向上への取り組み
(職員研修や自己評価等)
2 権利擁護(虐待防止等)

別添
○事業所向け児童発達支援自己評価表
○保護者等向け児童発達支援評価表

ガイドラインは①アセスメントの際の課題の整理②提供すべき支援の内容を踏まえた個別支援計画の作成③支援の効果の評価――の場面での活用を想定。さらに事業者だけでなく、保護者や自治体が個別支援計画や支援内容をチェック・評価することで児童発達支援の質の確保を狙うとしている。

《第1章 総則》の《2 障害児支援の基本理念》は、平成26年の「障害児支援の在り方に関する検討会」の報告書を踏襲した。また、同章の《4 児童発達支援の原則》は、現行の「保育所保育指針」に保育の原理として①保育の目標②保育の方法③保育の環境④保育所の社会的責任――が記されていることに準じて、①発達支援の目標②発達支援の内容③発達支援の環境④発達支援の社会的責任――とした。

「移行支援」が議論に

構成員の間では《第2章 提供すべき支援の内容》の《4 移行支援》が議論の的になった。山根希代子構成員(一般社団法人全国児童発達支援協議会理事)は、「移行支援は気付きの段階からの支援であると同時に本人・家族の支援であり、ライフステージから見たときは機関連携において縦と横の連携が必要となる。そこからすると移行支援を別項目立てとすることに違和感がある」と指摘し、同章の《1 発達支援》(本人支援)の中に入れるか、《第4章 関係機関との連携》の中に入れるほうが良いとの認識を示した。北川構成員は、「さまざまな子どもが地域で堂々と生きていくために児童発達支援はあると思う。幼稚園や保育園に行くだけが移行支援なのか。わざわざ移行支援を別項目立てした目的はどこにあるのかを教えてほしい」と話した。

田中正博構成員(全国手をつなぐ育成会連合会総括)は、「ガイドラインの基本理念には『障害児の地域社会への参加・包容を子育て支援において推進するための後方支援としての専門的役割の発揮』とあるが、主としたものがあっての後方支援。そこからすれば、(障害のない子どもも対象としている)子育て世代包括支援センターや地域子ども家庭支援拠点との整合性がないと、移行支援の主たる事業所が児童発達支援センターで、そこから地域に移行するという逆の話になってしまう」と指摘。移行支援の議論にあたっては、その前提となる一般的な子育て支援と児童発達支援の関係性も含めて議論すべきとの見解を示した。これに対して大塚座長は「個人的な見解」と前置きした上で、「専門的な後方支援とは、児童発達支援センターなどが、いかにしたら一般の保育所・幼稚園において対象児童が健全な育成ができるかを早めにアセスメントして送り出し、その後の支援をしていくということではないか。児童発達支援に関しては(一般の保育所・幼稚園などの)メインストリーミングへの押し出しということを強調したほうがよいと思う」と意見を述べた。

また、松井剛太構成員(香川大学教育学部准教授)は、「アメリカでは移行に関しては水平と垂直の概念がある。水平は同時期に保育所や児童発達支援センターなどの複数の所を利用し、機関間で移行を支える。垂直は小学校に上がったり、児童発達支援センターから保育所へ移行したり、ステージが変わる場合を言う。移行支援を水平で考えるか垂直で考えるかにより変わってくるのではないか」と話した。移行支援を水平・垂直で整理することについては、多くの構成員から賛同を得た。

検討会では、残り3回の会合を開いてガイドラインの内容を議論、17(平成29)年6月末を目途に児童発達支援ガイドラインを策定する予定。

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