「乳幼児期・学童期の健康情報」をビッグデータとして活用 ~第3回データヘルス改革推進本部~
1月19日、厚生労働省のデータヘルス改革推進本部の第3回会合が開かれた。同本部は、これまで縦割りで相互につながらなかった健康・医療・介護施策のICTのインフラを整備し利活用することを目的に、2017年1月に設置された。厚生労働大臣を本部長とし、各部局長や大臣官房審議官などで構成、部局横断的に幅広く検討を行っている。
目玉となるのは、保健・医療・介護のビッグデータを連結した「保健医療データプラットフォーム」の構築だ。これにより、個人の健診データや医療情報を分かりやすく提供する「PHR(Personal Health Record)サービス」や各保険者における加入者の健康管理データと全国平均との比較ができる「健康スコアリングサービス」などが可能となる。プラットフォームは2020年の本格稼動を目指している。
昨年7月には本部の体制強化として、事務局に改革全体を統括する新設の医務技監を置くとともに、改革実施に向けた助言・指導を行う外部有識者の「データヘルス・審査支払機関改革アドバイザリーグループ」を設置。具体的な検討を進めるため、データヘルス改革により実現する7つのサービスごとにプロジェクトチームを立ち上げた。7つのサービスは①保健医療記録共有②救急時医療情報共有③PHR・健康スコアリング④データヘルス分析⑤科学的介護データ提供⑥がんゲノム⑦人工知能(AI)。これと並行して審査支払機関の業務効率化や組織の見直しを図る「審査支払機関改革」についてもプロジェクトチームを設置して検討を進めている。
加藤勝信厚生労働大臣は、就任後初となるこの日の会合で、データヘルス改革で提供されるサービスにより国民が受けるメリット、改革にかかるコストおよびその負担者、具体的な時期などを明確にし、今夏までに改革工程表を整理するよう求めた。事務局は国民が受けるメリットについて▶マイナンバーカードを健康保険証に代用できる▶複数の医療機関で診療情報が共有され、無駄な検査や投薬が減る▶個人にあった薬を選択したり効果的な介護サービスを受けられる▶企業の予防・健康づくりの効果が分かる――の4つに整理しているが、「大臣の求めに応じ、これをさらに詰めて分かりやすいものにしたい」としている。工程表はプロジェクトチームごとに作成することも含め検討していく見通し。
この日の会合では、プロジェクトチームとして新たに「乳幼児期・学童期の健康情報」が加わることが明らかにされた。これでプロジェクトチームはサービス関係で8チーム、審査支払機関改革も含めると9チームとなった。「乳幼児期・学童期の健康情報」サービスは、子ども時代に受ける健診・予防接種など個人の健康情報履歴の一元管理とビッグデータとしての活用を目指す。健診内容や記録方法で標準化されたフォーマットがない、管理が紙台帳ベースでICT化がされていないなどの課題がある中で、来年度から項目の標準化などに関する検討会を設置し、必要な省令に反映させていく予定だ。
データヘルス改革に関連する平成30年度予算案は、前年度の17.1億円から大幅増の85.4億円となっている。「データヘルス分析」サービスではNDBの改修費や複数のデータベース間の連携・解析を行うシステム構築に12億円、「科学的介護データ提供」のデータベース構築には2.7億円、最も額が大きいのは「がんゲノム」サービスに関するもので、ビッグデータやAIを活用したがんゲノム医療として49.1億円を計上している。
国民が求めるサービスをどこまで提供できるのか――2020年度のデータベースの本格稼働を目指し、コスト面も含めた議論が進む。
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