地域共生社会推進検討会が中間取りまとめ
7月19日、厚生労働省は「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」(地域共生社会推進検討会、座長=宮本太郎中央大学法学部教授)の中間取りまとめを公表した。
厚生労働省では、「地域共生社会の実現」を福祉改革の基本コンセプトとして掲げている。2016(平成28)年7月には厚生労働大臣を本部長とする「『我が事・丸ごと』地域共生社会実現本部」を発足、「他人事」になりがちな地域づくりを地域住民が「我が事」として主体的に取り組む仕組みを作るとともに、「丸ごと」の総合相談支援の体制整備を進めてきた。18〈平成30〉年4月からは、社会福祉法の改正で包括的な支援体制の整備が市町村の努力義務となり、体制づくりに取り組む市町村を支援するモデル事業が全国各地で進められている。こうした中で、今年の5月16日には「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」が設置され、包括的な支援体制を全国的に整備するための方策について検討してきた。これまで5回にわたって議論を重ね、この日の中間とりまとめとなった。
中間取りまとめの構成は以下のようになっている。
Ⅰ 検討の経緯
Ⅱ 福祉政策の新たなアプローチ
1 個人を取り巻く環境の変化と今後強化すべき機能
(1)これまでの福祉政策の枠組みと課題
(2)個人や世帯を取り巻く環境の変化
(3)今後強化が求められる機能
2 対人支援において今後求められるアプローチ
3 伴走型支援を具体化する際の視点
4 重層的なセーフティネットの構築に向けた公・共・私の役割分担の在り方
Ⅲ 包括的な支援体制の整備促進のための方策
1 対応の骨格
2 断らない相談支援について
(1)断らない相談支援の機能
(2)断らない相談支援の具体化のための体制
(3)断らない相談支援の具体化に向けた検討事項
3 参加支援(社会とのつながりや参加の支援)について
4 地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援など地域づくりについて
(1)今後の地域づくりの在り方について
(2)地域住民同士のケア・支え合う関係性(福祉分野の地域づくり)
(3)多様な担い手の参画による地域共生に資する地域活動の促進
5 包括的な支援体制の整備促進の在り方
Ⅳ 今後の検討に向けて
Ⅰは地域共生社会の実現に向けたこれまでの取り組みを「検討の経緯」として時系列でまとめている。
Ⅱでは今後求められる対人支援の方向性を「福祉政策の新たなアプローチ」として整理した。従来の福祉政策については、個々のリスクや課題の解決のために現金・現物給付を行うことで「公的な福祉サービスの量的な拡大と質的な発展を実現してきた」と評価する一方、個人の生き方が複雑化し多様化する中ではリスクを抽出して対応する手法には限界があると指摘。現行の現金・現物給付による支援に加え、専門職の伴走型支援が求められるとしている。また、地域には住民同士の多様なつながりがあり、専門職が地域や社会とのつながりが希薄な個人をつなぎ戻していくことで包摂を実現していく視点と、地域社会に多様なつながりが生まれやすくするための環境整備を進める視点の双方が重要であり、こうした多様な関係性があいまって、地域における重層的なセーフティネットとして機能するとしている。
Ⅲの「包括的な支援体制の整備促進のための方策」では、モデル事業の成果などを参考に、包括的な支援体制を①断らない相談支援②参加支援(社会とのつながりや参加の支援)③地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援――の3つに整理。現状では縦割りの個別制度により、包括的な支援体制が構築しづらくなっていることから、「属性や課題に基づいた既存の制度の縦割りを再整理する新たな制度枠組みの創設を検討すべき」としている。また、福祉以外の領域における地域の多様な活動への支援政策を重ね合わせることにより、相乗効果が期待されるため、福祉、地方創生、まちづくり、住宅施策、地域自治、環境保全などの領域の関係者が相互の接点を広げることのできる「プラットフォーム」構築の必要性を提言している。
Ⅳでは今後の主な検討項目として、‣参加支援の具体的内容‣包括的な支援体制を構築する圏域の考え方‣包括的支援に求められる人員配置要件や資格要件の在り方――などを挙げた。
検討会は9月以降に再開し、「断らない相談支援」を中核とする包括的な支援体制の構築などに向け、より具体的な検討を行い、年内を目途に最終とりまとめを行う予定。
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