保健師を語る

「人との出会いは、かけがえのない財産」
前田敦子さん

住民との触れ合いを大切にし、専門職とのネットワークを広げてきた鳥取県三朝町の前田敦子さん。いつも住民さんが「前田さんはどこ?」と探し回るほど、頼りにされています。そんな前田さんが語る保健師にとって大切なこととは。

2017-01-10

保健師の財産

2016(平成28)年10月21日午後2時7分。それは、いきなりやってきました。最大震度6弱の鳥取県中部地震は、大きな揺れとともに人々の生活を一変させてしまいました。こんなとき、保健師のあなたはどう対応されますか。

非常事態に発揮されるべき保健師の強みって何でしょう。それは自分の町の人々の顔や生活のありようが分かることだと思います。そして、気になる町民の方々を思い浮かべることができ、どのように対応したらいいか考えると同時に、動く準備ができることだと思うのです。例えば、車いすのMさんは、自宅から避難することができただろうか。妊娠中のAさんは大丈夫かな。Bさんは独居だけど近所の人が声掛けをしてくれただろうか……など、町の人々を思い浮かべることが大事なのです。

住民を知っていることは保健師の財産です。それは、家庭訪問などでの出会いから得られる「人」というかけがえのない財産です。保健師なりたてのころは、見ず知らずのお宅への訪問はちょっと苦手と、躊躇する方もあるかもしれません。そんなときは相手の方との出会いを楽しみましょう。さまざまな生活の匂いと日常がそこにはあるから、家庭訪問って面白いし、やりがいがあると思うのです。

何のための保健師活動

私たち保健師は、メタボ予防対策として腹囲を減らすために保健師活動しているわけじゃないですよね。本当は相手の方がこれまでどんな人生を過ごされ、これからの人生をどのように過ごしていかれるかについて、健康面を切り口に関わる職種が保健師であると思います。

保健師は、まじめで頑張り屋さんが多いので、一生懸命頑張って事業を実施した割には、先の見通しがつかず、出口が見えなくなってしまいがちです。先の見通しは、さまざまな人との出会いの中ででき上がっていくものだと思います。こんなことが言えるのも、多くのスペシャリストに出会い、発信するチャンスを得たことや、これだと思う内容には飛びついていった経験があるからです。そうして培った人脈はかけがえのないものとなります。

余談ですが、このたびの地震の際にも、「あなたのこと、心配しているよ」という心にしみるメッセージをいただいたのは、仕事を通して得られた人脈のおかげだと思います。

あなたへのメッセージ

健康事業に不必要なものは何一つありません。どれも大切なものばかりです。けれど、限られた時間とマンパワーの中で、優先順位をつけること、それはまさに時代を読み取り、人々の考え方を感じ取り、健康事業を俯瞰する力なのだと思うのです。あなたのこれからに、たくさんの素敵な出会いがありますように。

(三朝町子育て健康課課長)

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