web版 講演旅行記-3 通算第21回
沼田市・板橋区
2016-08-24
群馬県沼田市。今年のNHK大河ドラマ「真田丸」で、真田家の城がある所として頻回に登場している土地だ。ここは、去年の7月に続いて2年連続2度目の講演になる(2015年11月号参照)。市の地域包括支援センターのMさんが窓口。私の大学の後輩でもある。
車を利用して関越自動車道を通って行けば、自宅から130kmくらい、そのうち110kmが高速道路だから、高速に乗っているのが約1時間程度と、まあ近いとも言える。ちなみに、3月に伺った鹿児島県奄美市までの直線距離を測ったら1260km ( ̄□ ̄;)!!
奄美はやはり遠い…。
5月19日、好天の下、車で沼田に向かう。去年はあいにくの雨であったが、それでも沼田城址である沼田公園などを見物した(2015年11月号参照)。その頃は比較的静かな印象であったが、今年は大河ドラマの影響で観光客が急増しているらしい。私の方は大河ドラマとは無関係に、今回は前回行けなかった方面に足を延ばす事に。
沼田インターチェンジで高速を降りて東に向かう。目的地は吹割(ふきわれ)の滝。前に沼田を紹介した時に、間違って「ふきわり」とルビをふってしまったが、正しくは「ふきわれ」だそうだ。冬場はスキー場が多い辺りを走って、公共駐車場に車を停める。
―駐車場にある案内図―
案内図の右端、吹割大橋の横を見ると、もうそこには滝。細いが、なかなか綺麗である。
―案内図の、大橋を左方向にわたる途中の右側の滝―
このかわいらしい滝だけでも良い気もしたが、せっかく来たので案内図に従って、進む。案内図では「日本ロマンチック街道」となっている国道120号線から左に折れ、少し下ると川に近づく。
このあたりで気づいたのだが、滝といっても今までの経験とは違うのだ。今まで私が見てきた滝というのは、上から流れ落ち、滝壺に向かう全体像を、横か下から眺めるという構図。有名な日光の「華厳の滝」や、和歌山の「那智の滝」も、そう。
―参考までに2013年1月に講演旅行で訪れた際の和歌山県の那智の滝―
ところが、目の前に広がるのは奇岩と、川。奇岩の上部から滝が落ちてくるのかというとそうではなく…。う~ん、説明が難しいので写真を見て下され。
―鱒飛の滝―
まずは「鱒飛(ますとび)の滝」。
これ、落差8メートルあるらしいが、間近からはわからない。別の高い位置からの観察じゃないと滝かどうかもわかりにくい。私の撮影ポイントからは、水が落ちて行く頂点部分しか、見えないのだ。すごい音を立てているから、滝なんだろうとはわかるけど。
さっきの「那智の滝で」言えば、滝のてっぺん、しめ縄がかかっている辺りの近くにいるようなものかもしれない。
周りの岩はとても不思議な感じ。
―周辺が、みんなこんな感じ―
白っぽい岩肌が特徴的で、そんな岩畳が足元にも続く。
そして、吹割の滝の登場。
―吹割の滝-1―
―吹割の滝-2―
わかるかな? ここもさっきの鱒飛の滝と同じで、わかるようなわからないような―でしょ。
そこで、案内図の「六角堂」に上がって見下ろしてみる。
―上から見下ろした吹割の滝―
こういう位置から見て、なかなか見事な滝だって、やっとわかった次第┓(´―`)┏
その後、浮島橋を渡り、対岸をぐるりと歩いて駐車場に戻る。近頃各地でクマの出現が相次いでいるが、対岸の道にもクマについての注意書きがあり、カネを鳴らしながら歩け、と、散策道沿いに鐘や鉄パイプとハンマーが所々に設置されていた。カンカンと叩きながら歩く。
そして、次の目的地へ。限られた時間の観光なので、なかなか忙しいのだ(いや、本当は観光じゃなくて、講演しに来ているだけなのだが…)。
国道を下って市内に近づき、Mさんお勧めの「高平こうじ店」に行き、麦麹味噌を購入。味噌の名前が妙で、「道楽息子」と言う。もしかすると、Mさんが、道楽モノの私をからかって勧めたのかもしれないと思ったが、帰宅後食べて、ちょっと癖のあるその感じがなかなか美味かった。昔、何年か味噌を手作りしていた事があったが、それを思い起こさせる懐かしい味であった。
味噌屋の次は近くの「おき山せんべい本舗 鍵屋」。何故か、Mさんのお勧めは煎餅ではなく、天然酵母のパン。そのすぐ隣りには史跡「高平の書院」。真田家の本陣、つまり、この辺りに来た時の宿泊・休憩施設跡がある。書院の建物は江戸中期の物が残っているらしいが、それより、その前の五葉松が立派。樹齢約400年。元は庭木らしいが、今は木の方が偉そうであった。
―高平の書院の前の五葉松―
次に向かったのは、昼食予定の店。ここ沼田は最近NHKと仲が良いみたいで、しばらく前に「ブラタモリ」でも紹介されていた。河岸段丘という地形が有名で、その番組で取り上げられたとんかつ屋に向かう。店から河岸段丘が見渡せるというのだ。
河岸段丘とは、川によって長年浸食されて出来上がった地形で、段丘って言うくらいだから、段になっているのだ。かなり大規模な段々畑みたいな地形とでも言うとわかり易いかな。人間が人工的に作ったのではなく、長い年月をかけて自然にできたもので、ここの場合は片品川という川が、築いたわけだ。
で、段丘が良く見えるという「とんかつトミタ」で、ロースカツ定食を頂く。
―味噌汁の味噌が、後になって思えば麹味噌かも―
この辺りは別名「とんかつ街道」とも言って、とんかつ屋が数多く並んでもいる。今回は頂かなかったが、枝豆入りのメンチカツ、「えだまメンチ」なる物も、新名物として売り出し中のようだ。
窓の外は、こんな感じ。
―高低差のある集落。わかりますか?―
食後は、「道の駅 白沢」に。「望郷の湯」という日帰り温泉施設があるのだ。そこの露天風呂からの河岸段丘の写真がこれ。
―望郷の湯からの河岸段丘―
というわけで、良い天気の下、昼間から露天風呂にも入って、この日のお遊びは終了。
朝のうちから沼田入りして、吹割の滝を見て、土産を買い、珍しい河岸段丘を見ながら昼食を食べ、さらに日帰り温泉でくつろぎ、さぁ、そろそろ帰ろうか……、といった感じだが、いやいや、あらためて言うが、これは「講演旅行記」である。つまり、講演をしなければ帰れないのだ┓(´―`)┏ あ、いや、そもそも、講演をしに来ているのである(;^_^A
―というわけで、すっかりくつろぎ切った状態で、沼田市保健福祉センターに向かう。
今回も対象は去年と同じく市内の居宅介護支援事業所の介護支援専門員で、テーマは「ストレスに負けないこころづくり」。
介護の仕事の皆さんのストレスというのは、大変だと思う。この翌月、埼玉県狭山市の介護施設でやはり介護関係者相手に話をしたが、こういった仕事に就く人たちは、基本的に優しい善人なのだろう。だから、援助対象者に対してイラッとしても、そう感じた自分を責める傾向にあるようだ。
最近の非常に悲しい事件のように、障害者の存在さえも否定するような言動は言語道断であるが、障害者やご老人が、理不尽な事を言ったり暴力的だったりする事も、現実には沢山ある。そんな時に支援する側がカッとなったりイラッとしたりする事は、人間として当然の反応なのである。援助する側もされる側も人間。寛容になれるに越した事はないが、怒りを感じる自分までをも責める必要はない。市民に対する保健師も、それは同じだと思いますよ。
というわけで、ストレス関連のお話をして、無事終了。
沼田からは昨年もいろいろお土産を頂いたが、今年も面白い物をいろいろ頂戴した。大河ドラマ関連で発売されたピンク色の「小松姫だるま」は時事ネタとして良いとして、傑作なのが「上毛(じょうもう)かるた」。群馬県人なら知らない人がいないというシロモノ。群馬では小さい頃からカルタと言えばこれで、群馬の名所などがふんだんに盛り込まれている。後日、群馬出身者数名に尋ねても、皆、かるたの文言をかなり覚えているようだ。更に傑作だったのが、「お前はまだグンマを知らない」―井田ヒロト作、新潮社刊―という、漫画本。大笑いであった。群馬では常識らしいが、もう、信じられないような話が沢山! 関心のある方はどうぞ。新潮社が出しているので、群馬でなくても日本中で入手可能だろう。
上記でサラッと書いたが、翌6月は埼玉県狭山市の施設で講演。これは以前、本誌関連の狭山での講演を聴かれた方からのご依頼だったので、まあ、無関係ではないが、そこまで取り上げていくときりがないので、申し訳ないが、省略させて頂く。
次は7月12日、東京都板橋区での講演。板橋区は2013年2月にも、本誌関連で呼んで頂いたが(2013年8月号参照)、今回はその時に聴いていたK保健師から、異動先の「女性健康支援センター」での講演を依頼された。そこは相談室と同じく東武東上線沿線で「大山(おおやま)」駅が最寄り駅。この日はまず、相談室に出勤。9時過ぎてから電車で大山駅に向かう。各駅停車で25分程。
―大山駅北口―
駅といっても駅舎らしい駅舎が無いでしょう。上りホームと下りホームのふたつのホームがあって、それぞれに小さな出入口があるだけの、小さな駅なのだ。古くからの駅であるために、駅を現代風に改装しようとすると、おそらく周辺の大規模な再開発もしなくてはならない。なので、23区内の駅なのに、駅ビルもなく、駅前ロータリーもバス停もタクシー乗り場もない。実は都内にはこういった小さな駅が沢山あるのだが、地方の方にはかえって想像しにくいかもしれませぬ。
10分弱歩くと、目の前に首都高速5号線の高架がある広い道に。その道沿いに建っているのが板橋区保健所だ。そしてその建物の5階に「女性健康支援センター」がある。なかなか熱心に専門相談の窓口などを設けて、頑張っている所のようだ。
―板橋区保健所―
左のガラス張りに見えるビルがそれ。ガラス部分に首都高速が映っている。大変申し訳ないが、はっきり言って、情緒も何もない。が、それはこういった土地の宿命でもある。
江戸時代には中山道(なかせんどう)の最初の宿場町として栄え、幕末には、新選組の近藤 勇(こんどう いさみ)が処刑された土地としても知られる所なのだが、江戸が東京になり、鉄道が整備されてから急速に人口が増え、家々がひしめき合って建てられたような土地。だから、保健所の建物のすぐ裏には、こんな感じの景色が今も残っている。
―右手前のかなり古い作りの家、正面の古い商店、その奥のマンションという雑然―
見どころよりも何よりも、まずは生活が最優先といった感じで出来てしまった町だろう。都市部周辺にはこんな感じの土地が沢山ある。
もちろん、板橋区の中にも名所や史跡はあるが、今回は残念ながらそういった所には行けなかった。
演題は「女性のこころの悩み対処法」。対象者を女性に限定した講演依頼は初めてだったと思うが、内容的には常日頃、保健師たちとの接点で話題になる母子保健や、余芸のひとつであるところの漢方の知識などを動員すれば、むしろ慣れた内容であったので、まあ、何となく無事に終わった。
終了後Kさんとお喋りをしていて、共通の知り合いがいる事がわかった。Kさんの出身大学の話をしていて、どこかで聞いた事のある校名と思ったら、普段から仲良くしている川越市の保健師と同級生と判明。卒業後、今のところ4人しか保健師になっていないそうで、そのうちの2人と、偶然に出会っていたわけだった。更にKさんのお名前が、実は私の次女が育てたペンギンと同じ名前という奇遇もあって、何とも愉快な出会いであった。
(ん? ペンギン? いや、もちろん自宅で飼っているわけではない。次女がそんな仕事をしているのだ。)
帰路はまず、駅に向かって、商店街を歩く。
―こちらは保健所側の北口商店街。飲食店が多い印象。踏切を電車が通過中―
私が乗るのは下り電車なので、踏切を渡って反対側のホームから乗車するが、そちら側の南口の商店街は長いアーケードになっていて、この辺りでは、なかなか活気のある商店街として有名らしい。
暑い平日の昼頃で、私がのぞいた時にはそれ程人通りがなかったが。ヒマな時にブラブラと覗くのも、楽しそうだ。
―南口のアーケードは結構長い―
昼過ぎに相談室に戻って、午後は普通に仕事。
今年度は、こうやって5月から始まり、現時点で月1回、11月まで決まっている。これくらいのペースだと無理がない気がする。だが、最近になって、またいろいろ動きが出てきている様子。はたして、どうなる事やら…。