藤本さんの講演旅行記

web版 講演旅行記-10 通算第28回
埼玉県川島町、茨城県ひたちなか市

2017-11-30

今年度は、今までに比べると、急に講演が減った。理由はわからない。悪評が日本中を駆け巡ったのかもしれないとも思ったが、そもそも、私は有名ではないので、そんな風にウワサが飛び交うわけもない。大して理由もなく、何となくこうなのであろう。
でも、もともとは、年に10回以上も講演に行くなんて事はなかったわけで、ここ数年が多過ぎただけとも言える。少し、正常化した、といったところか。

9月。埼玉県川島町(かわじままち)。川に四方を囲まれているから「川島」と言うらしいが、実は私の生活圏と割合近い。40年近く勤務している病院がある川越市の隣なのだ。だから、通った事はある。でも、通り抜けた事しかない地域。どこにもかしこにも田畑が広がるのどかな田園風景で、調べたところ、私の住む志木市と比べて面積は約4.5倍、人口は約2万人余、人口密度はおよそ16分の1になる。のどかなわけだ。

だいぶ前に私の地元にいた県の保健師Fさんが、この町を管轄する東松山保健所にいて、町の事業での講演に適任者はいないかときかれ、私を推挙しちゃったらしい。町の保健師も読者であったため、話はとんとん拍子に進み、うかがう事になった。
話が出たのが4月、実施が9月。ところが担当するS保健師は、JICAからの派遣で9月からスリランカに行ってしまうとの事。
なので、その前に打ち合わせと称して、飲む事になった。6月にSさんとN栄養士が来室。ちゃんと打ち合わせも(一応)してから、事前懇親会( ^_^)/▼☆▼\(^-^ )

さて、本番の日は9月14日。その日は午前中、浦和のクリニック。大急ぎで退出して電車で川島に向かう。が、川島には駅がない。川越市内の駅まで迎えに来て頂く。
町役場近くからの風景。

こんな感じで圏央道(首都圏中央連絡自動車道)ができてインターチェンジも町内にできたから、今後は物流を中心にした開発が進むかもしれないが、基本的には見渡す限り、こんな景色。

今回の講演は、「かわべえ健康大学」という連続講座の中で、公開講座として開かれるもの。演題は「先生、質問です! 前向きに生きる 心のリフレッシュ術」。「かわべえ」というのは、特産のイチジクをモチーフにした、いわゆる「ゆるキャラ」の名前、と公式サイトにある。孫娘の「かわみん」とペアらしい。後で紹介する写真の中に登場している。
ま、いつものように何となく終わり、懇親会までの時間、町内の役場近辺をブラブラと歩く事になった。

町のほぼ中心に位置するという、平成の森公園に。大きなグランドがあり、その他にも、バラの小径、菖蒲園、古代ハスの池など、いろいろあるようだが、全部季節はずれ。

これは全体の中心的な位置にあるモニュメントの「時の塔」。のんびりと犬の散歩をしている人もちらほら。
それより興味深かったのは、こちらの和船。

結構な大きさ(長さ)で、何のための船かと思ったが、説明書きによると、昔、水害が多発していた頃の、救助・運搬用の川船らしい。
最初に書いたように四方を川に囲まれているような所だから、昔はさぞ、大変だったであろう。しかも、起伏のない、ザ・関東平野って感じの所なので、一度溢れたら、長い期間にわたって集落が水没した事であろう。説明書きでも明治23年の大水害では4地区で全村床上浸水とか。今はそういった災害と無縁になったらしいが、近年の異常気象。今後も何事もない事を祈りたい。
周辺の田んぼは刈り取りの真っ最中。脇の水路には大きなタニシが所狭しとウジャウジャ。

写真ではわかりにくいが、こんなにまとまってウジャウジャ居るのを、私は今まで見た記憶がない。
おそらく10センチ四方に20個前後の密集である。是非捕まえて帰って食したいところであるが、何せ講演帰りで網も袋もなく、更にこれから懇親会であるため、断念する。
その田んぼからひょいと顔を上げると、町役場の裏側が見える。

中に入ると、こんなポスターが。

郷土料理の紹介だが、その右下に先程紹介したゆるキャラ二人がいる。
そして、料理は、左が夏場の「すったて」、右が冬場の「呉汁」とあるが、この後に行われた懇親会で、「すったて」が登場した。

会場はさっきのポスターにも名前が載っていた「魚河岸直送鮮魚 そうま」。どうやら、地元名物が食べられるお店、という事で、選んで頂いたらしい。
事務方の課長さんと保健師、栄養士、今回のつなぎ役の県の保健師Fさんと、9人で乾杯。皆さんが自分を何かに例えた自己紹介をして下さる。カメ、ネコ、イヌ、トリetc. うん、確かにそう言われれば、そう見えてきた。特に、N栄養士は野生のネコと言っていたが、まさにそんな感じだ。その後、ニャアニャア鳴いていたような気もする。あれ、さすがに記憶違いか┓(´―`)┏

そして、料理。刺身などの海鮮のあとに、いよいよ「すったて」が出てきた。
地元育ちの課長さんの解説を聞きながら、「すったて」に取り組む事になる。
まず、一人一人にゴマの入ったすり鉢が配られる。それを、ひたすら、する。ゴマが潰れて油分などが出てきて、しっとりし、粒がなくなるくらいまで、する。ひ弱な私にとってはなかなかの重労働である。
次に、玉ねぎを入れてつぶし、キュウリや味噌を入れて、それを叩く。

こんな感じ。
そこにだし汁を入れて良くかき混ぜて、薬味などを入れて、頂くのである。

ごまの風味が強く、美味しい。この辺は麦だけでなくゴマも作られていたようだ。課長の解説によるとすりたてを食べるから、「すったて」とか、農家が作業の合間につっ立って食べるから「つったて」と呼ぶ事もあるとか。
素朴な郷土料理を頂きながら、楽しいひと時は終わった。

そして、11月。今度は茨城県ひたちなか市。茨城県は南北に長いが、ちょうど真ん中あたりの海沿いの市。旧勝田市と旧那珂湊(なかみなと)市が合併してできた市である。
武蔵野線、常磐線、常磐線特急と乗り継いで、勝田駅に向かう。乗った特急は「常盤57号」。

常磐線の特急はちょっと変わっていて、全席指定だが、座席未指定券という、変わった券がある。
自由席ではなく未指定なのだ。普通なら、例えば1号車の1-Aという指定券を買うでしょう。
それが未指定券だと、空いている所、どこに座っても良い。席の上に小さなランプが3つあって、赤ならば「今のところ空席ですよ」っていう意味。なので、そこまでは自由席と一緒。で、1号車1-Aに座ったとする。だが、ある駅に近づくとそのランプが黄色に変わったとする。そうなると「この先の駅から、この席は指定席として販売されていますよ」という意味。なので、他の席に移動する事になる。JRでは今後自由席が減ってこういうスタイルの未指定が増えるのかもしれない。
旧勝田市の名を持つ勝田駅で下車。

ちょっとピンぼけ写真だが、新幹線の駅でもないのに、なかなか立派なつくりの駅である。後で教えてもらったが、茨城のシンボル、筑波山をイメージして作られた駅舎だとの事。この写真だと、全景はわからないが。
事前に教えて頂いたコーヒー屋さんに昼食のため、向かう。

サザコーヒー。写真は入口だが、よく見ると、後方の大きな建物にもSAZA COFFEEの文字が見える。入り口を入ると、各種コーヒーやさまざまなグッズのショップ。そして奥が喫茶コーナー。ギャラリーもある。私はすぐ近くのカウンター席に着いたが、奥にも拡がっているようだ。 予備知識がほとんどなかったが、この辺りではかなり有名なお店らしく、昨今幅広く展開している有名なコーヒーショップチェーンも、茨城では太刀打ちできないとか。
コーヒーと、サザ風ホットパンソーセージ、クラムチャウダーを頂く。

ご覧のように、いわゆるフランスパンのホットドッグだ。
クラムチャウダーも美味であったし、コーヒーも飲みやすい物であった。
コロンビアに自社農園を所有していて、今や都内にも支店があるらしく、あちこちで支店を見かける日も遠くないかもしれない。

昼食後、歩き出す。傘をさそうかやめようか悩むような雨が時々。
吉田神社に立ち寄る。

そんなに大きな神社ではないが、なんというか、うまくまとまった感じのある良い神社。創立は500年以上前だが、今の建物は昭和51年に建て直したものとの事。
そして、会場に到着。

生涯保健センターという名称は、初めて見た気がする。
対象は一般市民、テーマは「心を元気にする講座~心のリフレッシュ術教えます~」。
ま、講演は、やはりいつものように何となく終わる。

そこからが問題であった。
この日も懇親会が予定されていて、講演終了後、約2時間余の時間を潰さなくてはならないのだが、あいにく雨がちゃんと降り出したし、夕方は、もう暗い。

すると、申し訳ない事に、急きょセンターの方が、車で案内してくれる事になった。連絡係だった保健師のKさんとM係長も同乗。
まずは、国営ひたちなか海浜公園の方に。ここは季節によって様々な花を楽しむ事ができる場所として有名で、その様子をテレビで見た事はあったし、天気が良ければ立ち寄ってみようと思っていた所だ。
しかし、雨の夕暮れ。入り口の所まで行ってくれて、そこからは右折して海岸に向かう。
海岸線沿いに南下して行くと、海産物のお店が並ぶ一角に。新潟の寺泊という所がそういった店が沢山ある場所として有名だが、よく似た雰囲気。寺泊同様、観光バスで沢山のお客が押し寄せるらしい。
しかし、雨の夕暮れ。ほとんどのお店が閉まりかけていたような様子であった。
それでも、海岸から少し離れた所の「伊勢増」という海産物の老舗に連れて行って頂いた。

この辺は干し芋の生産が盛んで、専門店もある程。なので、海産物以外に「ほしいも」という旗もあるわけだ。
次に向かったのは醤油の製造販売をしている「黒澤醤油店」。

関東で醤油と言えば千葉県なのだが、茨城は千葉の北なので、同じような文化があるのだろう。
味見ができて、醤油を使ったスイーツも売っている。味見して買ってきたのが、これ。

これがなかなか美味しくて、カミさんにも好評であった。

観光はこれくらいにして、懇親会会場近くのMEGAドン・キホーテで降ろしてもらい、私はここで、少し時間潰し。案内頂いた皆さんは懇親会参加の前に帰り支度も必要でね。
で、この店で、特に買い物はしなかったのだが、初めて見たのが坂道の動く歩道。エスカレーターよりもはるかにスペースを取るのに、そんなモノが階と階をつなぐものとして設置されていたのだ。用もないのに上って、下りてみた。う~ん、どちらも足首が鍛えられそうな感じ。私の地元にMEGAはないが、あちこちの店に、こんなものが設置されているのだろうか? 不思議な存在である。広い店舗だからこその存在だろう。

そして、懇親会。駅のロータリーの面するホテルの1階の「米寿」。10人の保健師さんたちと一緒に楽しく過ごす。八十八歳のお祝いみたいな名前だが、魚介類を中心とした美味しいお店だった。
お酒も地酒が多く、知らない物がほとんどだった。
駅まで皆さんにお送り頂く。Mさんが荷物を持って付き添ってくれ、後方からは親子みたいだという声が。いやいや、Mさんだけではなく、うちの娘達よりも若い方が5人いらしたんじゃなかろうが。
そのうち、孫とおじいちゃんみたいだね―と言われる日も近いか…。
あいにくの雨だったが、心温まる1日であった。

今年度の講演旅行は、今のところ、これでおしまい。年明けに都内で喋るが、それは本誌のご縁ではないし。
さて、来年度はどうなる事やら…。

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