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地域保健ネットサロン
会員からの活動報告
会員からの活動報告一覧 > 門元紀子(一般社団法人Nurse for Nurse 代表理事) 2024.10.11
一般社団法人Nurse for Nurse(以下、NfN)は看護職のキャリア開発支援を通して様々なローカルおよびグローバルな課題解決を目指している団体です。全国、全世界で様々な素晴らしい取り組みをされている方々をつなぎ、より早く課題解決に導けるよう会員同士データベースでそのキャリアの軌跡を共有するとともに、1対1でのオンラインキャリア相談が実現できるプラットフォームを運営しています。今年で3周年を迎えますが、多くの保健師、助産師、看護師の方にご賛同いただき、社会課題解決に向け様々な事業を展開しています。今回はそのうちの1つ、医療的ケア児・重症心身障害児とそのご家族との活動をご紹介します。
Nurse for Nurseと医療的ケア児・重症心身障害児とのつながり
NfNと医療的ケア児・重症心身障害児の子どもたちとのつながりは、NfN設立前に遡ります。NfNの構想を考え、事業内容を詰めている際に、テレビ放送や新聞記事で目にした医療的ケアが必要な子どもたちやそのご家族の現状を知ったことから始まりました。地域で暮らす子どもたちの生活を支援する看護職が求められている、それならそのようなキャリアを応援、後押しできるような活動をしたい、そう思ったのです。
NfNはConnect and Discoverをコンセプトとして、つながりと発見を大事に活動しています。私一人、NfN単独ではできないことも、当事者団体である認定NPO法人みかんぐみ(以下、みかんぐみ)様とのご縁や様々な方々のあたたかいご支援をつなぐことで、子どもたちの地域での生活を支える看護職を増やす事業に取り組むことができています。
これまでの中央共同募金会事業
2022年度より毎年活動をご支援いただいているのは、中央共同募金会様による「赤い羽根 新型コロナ感染下の福祉活動応援全国キャンペーン 重症児等とその家族に対する支援活動応援助成」です。NfNはみかんぐみ様より業務委託を受け本事業を実施しています。
2021年9月に「医療的ケア児支援法」が施行されましたが、サービスの拡充に向けて教育や福祉など様々な分野で、ケアの担い手である看護職がまだまだ不足しています。地域間格差も生じており、担い手不足が小児訪問看護を実施しない、できない大きな理由の1つとなっています。子どもたちや当事者家族を在宅/地域で支える専門的な人材の不足は大きな課題であり、子どもたちが地域で安全に生活するために、その支援にあたる看護職を増やす取り組みは重要と考えます。
2022年度に開催しましたウェビナー「集まれ!看護職たち 医療的ケア児・重症心身障害児の暮らしを支える×看護職のキャリア」には全国から200名以上の医療従事者やご家族、福祉関係者やメディアの方にお申込みいただきました。このウェビナーは内容の企画から当日の発表、広報含めた運営、実施まで看護職と当事者ご家族の「協働」によって実現されました。このような取り組みは私たちにとって初めての試みであり、手探りの部分も多くありましたが、お互いの強み(当事者団体でしかできないこと、看護職だからできること)を活かした事業にすることができました。
また、見学プログラムには4名の看護職の方々にご参加いただき、実際に子どもたちがいるご自宅へ訪問させていただきました。このプログラムは、参加者の方にそれぞれの立場で医療的ケア児・重症心身障害児へのより良いケアやサービス提供について考えていただきたいというねらいをもって実施しました。参加者の中には、プログラムへの参加がキャリアチェンジの後押しになったり、ご自身が管理者を務める訪問看護ステーションでの小児訪問看護の事業計画のヒントになったりするなど、地域で暮らす子どもたちへの支援へつながるものとなりました。
見学プログラムの様子はこちらの動画にてご覧いただけます。プログラムには行政保健師、訪問看護ステーション管理者、小児病棟に勤務していた看護師など様々な背景をもつ看護職にご参加いただきました。自宅での子どもたちの様子、看護職やご家族の想いなど、是非ご視聴ください。
2023年度は看護職とご家族の相互理解促進を目的としたオンライン交流会を実施しました。この交流会は、看護職の想いをサービス利用者である当事者へ、当事者の声をサービス提供者である看護職へ届ける機会となりました。また、ご家族や看護職の方々にご協力いただき、ご家族が子どものケアを委ねる看護職へ抱く思いと、そのケアを子どもが生活する場で引き受ける看護師が抱いている困難感や看護ケアへのやりがいを明らかにする調査研究にも取り組みました。この結果は2024年11月の日本在宅看護学会第14回学術集会にて発表予定です。
2024年度の中央共同募金会「在宅支援看護職を増やす事業」
今年度は下記2つの事業にみかんぐみ様と取り組みます。
①看護職と当事者の交流イベント(2024年11月3日、荻窪タウンセブンにて開催)
本イベントでは看護職、看護学生を対象に医療的ケア児・重症心身障害児や当事者ご家族と交流する機会を提供します。子どもたちのケアに従事している看護職から在宅での支援の実際やそのキャリアについてもお話しが伺えます。前年度に実施したオンライン交流会を発展させたものとして、対面ならではの交流ができる機会となるよう準備を進めております。
②「暮らし」見学プログラム(2025年2月実施)
本見学プログラムは一昨年のプログラムを発展させ、子どもたちの学校への送迎の様子や訪問学級の様子など、参加者のご要望に合わせ、自宅での「暮らし」を一緒に体験しながら見学する内容となる予定です。全国から地域で暮らす子どもたちのケアに関心のある看護職(経験は問いません)のご応募をお待ちしております。
看護学生に向けた活動
NfNでは本領域での看護職のキャリアを学生の頃からより具体的に知ってほしいと考え、看護学生に向けた取り組みにも力を入れています。そこで、みかんぐみ様と共に「医療的ケア児・重症心身障害児の生活と看護職の関わり」と題した動画を作成しました。この動画は2022年度および2023年度に中央共同募金会様の助成を受け実施した事業の記録映像で、医療的ケア児・重症心身障害児の生活の様子やご家族と看護職の関わりを紹介しています。看護職や看護学生、これから看護職を目指す方、そして当事者ご家族など多くの方にご覧いただき、この領域への関心を高めると同時に相互理解を促進する一助となることを願っています。
本動画の制作において監修いただいた北村千章先生(清泉女学院大学看護学部小児期看護学教授・NPO法人親子の未来を支える会理事)のコメントは下記です。
「看護職が子どもたちにケアを実施するうえで保護者との信頼関係や関係性構築は欠かせないものであり、それらを理解するうえで本動画はとても良くまとめられています。また、地域で暮らす子どもと家族を支えることの看護の魅力も語られており、多くの看護学生、看護職にご覧いただき、この分野でキャリアを構築・挑戦する看護職が増えていくことを願います」
全国の看護系大学の小児看護学の教員の方々に教材としてもご使用いただけるよう広くご案内しました。ご覧いただいた先生方からは下記のようなコメントをいただいております。
在宅看護や公衆衛生看護、保健師養成課程の先生方にも是非ご覧いただき、地域で生活する子どもたちへの支援について学生の皆様と考えていただけますと幸いです。
事業を通しての学びと気づき
学生時代に医療的ケア児や重症心身障害児の在宅でのケアについて学ぶ機会が少なかった私は、事業を通して当事者ご家族や参加される看護職から多くの学びの機会をいただいています。看護職がよかれと思い実施しているケアや言葉かけひとつとっても、知らず知らずに受け手であるご家族の心を傷つけることがあるということ。また、支援にあたっている看護職がいかに様々なプレッシャーに押しつぶされそうになりながらも、懸命に子どもたちの命を守っているかということ。Nurse for Nurseではこのような様々な気づきを得て、さらなる事業の発展を目指し活動しています。
具体的には、相互理解促進、子どもたちへより良いケア提供体制構築のために引き続き看護職と子どもたち、当事者ご家族との対話の機会を設けたいと考えています。是非、11月3日開催の交流イベントへのご参加、そして「暮らし」見学プログラムへのご参加を含め、2024年度の中央共同募金会事業へご支援の程よろしくお願い致します。
最後に、Nurse for Nurseの活動にご賛同いただける看護職の方は是非会員登録もお待ちしております!
■ 本事業サイト
https://www.nursefornurse.org/akaihane24
■ 認定NPO法人みかんぐみウェブサイト
https://mikangumi.com/
■ Nurse for Nurseウェブサイト
https://www.nursefornurse.org/(会員登録受付中)
■ お問い合わせ先
Nurse for Nurse事務局 info@nursefornurse.org
*本事業は中央共同募金会「重症児とその家族に対する支援活動応援助成金 第3回」を受け実施しています。ご寄付いただいた皆様に感謝申し上げます。
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地域保健編集部
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