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【レポート】第18回日本在宅医学会大会/第21回日本在宅ケア学会学術集会合同大会

在宅医療は地域包括ケアシステムを構築する上で重要な役割を期待されている。2016年7月16日・17日、東京都江東区のビッグサイトTFTビルにおいて、第18回日本在宅医学会大会/第21回日本在宅ケア学会学術集会合同大会が開催された。

合同大会のテーマは「在宅医療とケアの原点」。期間中は市民公開講座も含め5,400人が会場を訪れた。このうち認知症の方の食支援に関する教育講演、シンポジウムをレポートする。

教育講演「認知症の方の食べる喜びを支えるケア」
北海道医療大学看護福祉部 山田律子教授

高齢者に対して内閣府が行った生きがいを問うアンケート結果では、「家族との団らん」についで「食べること」が上位にあがっている。「よりよく食べることはよりよく生きることにつながり、食事は生活の営みの一部である」。しかし、加齢変化、認知症の進行などにより、食事に介助が必要となったり、介助をしても食べてもらえなかったりするケースも増えてくるという。それは一体なぜなのか? 本当に食べたくないのか、それとも食べられないのか…。その真意を探求することが食支援の大切なカギ、と山田教授は語った。

はじめに、食べ物を食べる対象物として認知して、口に運び入れ、噛んでだ液と混ぜ合わせて食塊をつくる、飲み込むという「食べる」ための一連の過程と、摂食・咀嚼・嚥下機能の加齢変化についての基本的な説明があった。次に食支援のポイントとして①病態に基づく視点、②生活者の視点、③加齢変化を含む心身に気づく視点の3つが重要となることが、いくつかの事例とともに紹介された。食欲があっても、温度が適切でない、味が好みでない、周囲の環境が騒がしいなど、さまざまな理由で食べられないことがあるという。

認知症の方にとって適した環境を整えることで、美味しく主体的に食べてもらうことが可能である。このためには食事場面の観察が不可欠だが、食事の食べ始めから終わりまで観察することが難しい場合には、最初の5分間だけでも観察してほしいとのこと。認知症の方に多い「摂食開始困難」では、食具や食器を持つことを支援するなど食べる行為の始まりを支援することで食べ始めることができる例や、配膳された食器数が多く混乱している場合には、1品ずつ出すことで認知症の方が食べやすくなる例などが紹介された。

シンポジウム「認知症の方の食支援を考える」

教育講演に続けて行われたシンポジウム「認知症の方の食支援を考える」では、歯科衛生士、言語聴覚士、作業療法士、看護師など、多職種による認知症の方への食支援の発表や、会場参加者との意見交換などが行われた。多職種協働のポイントとしては、専門職同士の言語の壁をなくし、認知症の方の状態について共通言語を用いて可視化することであり、例えば疲労度を時間経過や動作記録などで情報共有する工夫などが紹介された。

多職種連携のよい点として、互いの専門性を発揮する中で新たな視点に気づくことが多く、結果として認知症の方への最善の支援につながるということが、シンポジストが質問し合っている様子や、他者の発表に刺激を受けている様子などからも感じられた。

認知症の方への支援は、今後ますます保健師に期待される役割のひとつである。本講演やシンポジウムで紹介された事例が自分たちの地域でどう実践できるのか、広い視点を持って取り組むことが望まれる。

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