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【レポート】第2回 生活保護受給者の健康管理支援等に関する検討会

9月21日、厚生労働省の「第2回 生活保護受給者の健康管理支援等に関する検討会」(座長=尾形裕也東京大学政策ビジョン研究センター特任教授)が開かれた。自治体へのアンケート調査の結果報告、生活保護受給者と健康格差に関する有識者の発表のほか、受給者への健康管理支援の介入方法案などが示され、それを基に議論を進めた。

自治体へのアンケート調査の結果報告

福祉事務所を設置する全ての自治体(901自治体)を対象とした、2015(平成27)年度の健康診査の状況に関するアンケート結果では、生活保護受給者が受給前に加入していた医療保険者の実施する特定健診等の結果を入手していた福祉事務所は2%(22自治体)に過ぎなかった。健康増進法による健康診査を実施している自治体は90%(811自治体)だったが、その多くは受診率が10%以下であり、受診率不明という自治体も400ほどあった。健診結果を入手している福祉事務所は17%(136自治体)で、そのうち健診結果を基に健康管理支援を実施している福祉事務所は75%(102自治体)だった。

「生活習慣病の重症化予防等の健康管理支援事業」に参加した自治体(95自治体)および独自に生活習慣病の健康管理支援を行っている自治体(65自治体)へのアンケート結果も報告された。前者のアンケート結果は初会合のときにも一部が報告されている。結果からは、保健師などの専門職がデータから支援対象を抽出し食生活・栄養指導、運動指導、受診勧奨などをするとともに、ケースワーカーと家庭訪問に同行したり、ケース検討会議を開催したり、レセプト点検を行っている実態が浮かび上がった。ケースワーカーとの連携では、保健師がケースワーカーに専門的助言をしたり、同行訪問の後にケースワーカーが状況確認したり、自治体ごとにさまざまな方法が取られていた。
支援の効果測定については、医療機関受診や検査値の改善などの指標で測定している自治体がある一方で効果測定を実施していない自治体もあった。熱心に取り組む自治体から無関心な自治体までばらつきがあることについて、事務局は「丁寧に分析したわけではないが」と断った上で、「受給者になる前の健診等の結果を入手している(熱心な)22自治体などは、福祉事務所に保健師がいる印象がある」と話した。

有識者からの発表

この日は、参考人として呼ばれた近藤尚己氏(東京大学大学院医学系研究科准教授)が「生活保護受給者への健康支援の考え方について~健康格差対策の視点から~」をテーマに発表し、議論にも参加した。近藤氏は健康の多くは社会環境で決まるという社会疫学の考え方を説明した上で、健康日本21(第2次)に「健康寿命の延伸・健康格差の縮小」「社会環境の質の向上」が盛り込まれていることに触れ、「まさにスタートラインに立ったところだと思っている」と話した。
社会弱者が健康行動を取りづらい理由としては、リスク認知の知見を紹介。「私たちのリスク認知には二つのタイプがあり、一つはケーキがあると思わず食べてしまうという自動システム、もう一つは食べるかどうか熟慮して決定する熟慮システム。脳がストレスを感じると熟慮システムを低下させ自動システムを優位になり、がまんが効かなくなったり記憶力が低下したりするといわれている」と説明した。また社会弱者は健康に無関心になりがちであり、その層に向けたアプローチとして社会・生活環境の整備や健康行動を思わず起こさせるナッジ戦略(nudge、「ちょっと後押しする」の意)があるとして、パチンコ店での簡易健診サービスの取り組みなど成功例を紹介した。
最後に「生活保護受給者の管理データを活用して見える化し、戦略的に対策を打っていくこと、“健康”をうたい過ぎず本人が求めていることを明らかにし、そこに訴えながら気づいたら健康になるようなアプローチが求められる。特に社会的なつながりは重要」とまとめた。

受給者への健康管理支援の介入方法案

事務局からは健康管理支援の介入方法の案も示された。支援のターゲットは、取り組みにより予防可能な糖尿病などの生活習慣病のリスクを有する受給者で、既になんらかの疾患で医療機関に受診している受給者(入院・入所は除く)もこれに加える。その上で福祉事務所が受給者のデータを用い、集団の特徴に基づく戦略を立てる方法として、受給者の生活の自己管理能力を縦軸、生活習慣病のリスクを横軸としてアセスメントし、ハイリスク以上のグループには個別動機付け支援など本人の生活・社会スキルに応じた個別支援計画を作成し、要医療未満のグループには運動教室など地域の社会資源を活用するポピュレーションアプローチを併用する、階層化による健康管理支援を提案した。
また、受給者には生活習慣病のハイリスク者が多く、特定健診の基準で選定すると支援対象者が多くなってしまうことから、支援による改善や自立の可能性が高いグループ(壮年期、子どものいる世帯など)から優先的に取り組むこと、グループの特性に応じて個別支援から集団・地域を含めたさまざまな介入方法を弾力的に適用する提案なども盛り込んだ。

提示された案に対して、複数の委員から「生活保護受給者の健康管理支援は単年度の事業では難しく、長期的な視野が必要」との意見が述べられ、事務局は「毎年、類似したプランを繰り返すのではなく、その人の生活や状態に応じてプランニングし、いろいろな幅がある中で見直しをしていくことをイメージしている」と説明した。中板育美委員(日本看護協会常任理事)は「生活保護の受給歴が短い人はポピュレーションアプローチに乗りやすいが、受給歴の長い人は健康に関心を持つ力が奪われ、情報リテラシーも低い傾向にある。それを踏まえたポピュレーションアプローチのメニューを考える必要がある」と指摘。その上で、「(受給者への健康支援の意識が高いとみられる)22自治体の取り組みの中にヒントがあるのではないか。ぜひ、ヒアリングをしてほしい」と求めた。座長も「わずか2%(22自治体)だが、さらにヒアリングしてほしい」と重ねて要請した。
近藤尚己参考人は「生活背景のデータとレセプトなどのデータを合わせれば、生活と病気の関係が分かりやすい。生活背景の情報はケースワーカーが持っているがデータ化されていない。現場に負担をかけずデータ化し結果を分析するような仕組みを考える必要があるのではないか」と持論を述べた。

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