「新たな自殺総合対策大綱の在り方に関する検討会」の報告書案をおおむね了承
4月26日に開かれた厚生労働省の「新たな自殺総合対策大綱の在り方に関する検討会」(第6回)で、同検討会の報告書案が示され、おおむね了承された。
2006(平成18)年に自殺対策基本法が施行されてから10年が経過した。この間、自殺総合対策大綱が2度改正され、さまざまな取り組みが進められてきた。その結果、1998(平成10)年から年間3万人超えが続いていたわが国の自殺者数は減り続け、2016(平成28)年には2万2千人を下回るなど着実に成果をあげた。しかし、主要先進7か国の中で、わが国の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)が最も高いことに変わりはなく、依然として深刻な状況が続いている。
昨年3月には「自殺問題はいまだ非常事態が続いており決して楽観できない」との認識のもと自殺対策基本法が改正され、「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現」や「自殺対策は生きる事の包括的な支援」であることが法律に明記された。また自殺対策総合大綱はほぼ5年ごとに見直しをするため、12月には「新たな自殺総合対策大綱の在り方に関する検討会」が発足し、新大綱の内容について論点を絞り議論を重ねてきた。論点は、①関連施策の有機的な連携を図り、総合的な自殺対策を推進②地域レベルの実践的な取組の更なる推進③若者の自殺対策の更なる推進④過重労働を始めとする勤務問題による自殺対策の更なる推進⑤PDCAサイクルの推進、数値目標の設定――の5つ。
この日に示された報告書案では、上記5つの論点のうち、①②を「第1 総論」、③④を「第2 個別施策」、⑤を「第3 施策の推進体制等」としてまとめ、それぞれの議論を整理。大綱見直しのポイントとした。
「第1 総論」では、自殺対策は社会における「生きることの阻害要因(自殺のリスク要因)」を減らし、「生きることの促進要因(自殺に対する保護要因)」を増やすことを通じて、社会全体の自殺リスクを低下させる方向で推進すべきと基本理念を明確化した。また、「我が事・丸ごと」地域共生社会の実現に向けた取り組みや生活困窮者自立支援制度など、各種施策との連携が必要であることを盛り込んだ。妊産婦の自殺死亡率は同世代の一般女性の自殺死亡率の約3分の2を占めることから、妊産婦支援施策等との連携の必要性についても明記した。
「第2 個別施策」では、若者の自殺対策、過重労働を始めとする勤務問題による自殺対策を中心にポイントを整理した。また、遺族への情報提供や相談体制の充実、遺族を支援する機関や人たちについての支援や研修の推進などを盛り込んだ。
「第3 施策の推進体制等」では、自殺対策の実効性を客観的な指標で検証できるようにするために、施策の担当府省を明記するとともに、PDCAサイクルにおける補助的な評価指標(例えば全国相談窓口の認知度など)が求められるとした。また、26(平成38)年までに自殺死亡率を15(平成27)年と比べて30%以上減少させるなど、具体的な数値目標を掲げるべきとした。
この日の検討会で、報告書案はおおむね了承された。若干の修正を経て、夏ころには正式な報告書として公表される予定。
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