全国健康関係主管課長会議
2月21日、全国健康関係主管課長会議が開かれ、法改正や予算、各種取り組みについて担当課室から説明があった。主だったものを報告する。
福田祐典健康局長の挨拶【要旨】
きょうは4つの事項について伝えたい。1つ目は受動喫煙対策。2020年東京オリンピック・パラリンピック等を契機に望まない受動喫煙のない社会の実現を目指して、1月30日には「望まない受動喫煙対策」の基本的考え方¬を示した。引き続き、今国会における法案の成立に向けて努力していきたい。あわせて受動喫煙対策を進めるための各種支援策の推進、普及啓発の促進など、総合的かつ実効的な取り組みを進めていく。
2つ目はがん対策および肝炎対策。昨年10月に策定された第三期のがん対策推進基本計画に基づき、がん予防、がん医療の充実、がんとの共生を3つの柱として着実に取り組みを実施していく。本年はがんゲノム情報や臨床情報を集約し、質の高いゲノム医療を提供する体制を構築するため、がんゲノム情報管理センターおよびがんゲノム医療中核拠点病院等の整備、がん診療連携拠点病院の指定要件の見直しの検討などを進めることで、さらなるがん対策の推進を図っていく。また、がん登録ついては、本年末に全国がん登録として初めて平成28年の診断症例データを公表する予定である。引き続き全国がん登録情報の収集、提供等の事務について、明確化標準化を図ることなどにより、登録データ情報の利活用の推進を図っていく。肝炎対策については、平成30年度からの新規事業として、肝がん・重度肝硬変治療促進研究事業を実施する予定である。患者から大変強い要望のあった事業なので、今年12月の実施に向けて、都道府県の皆様方に協力をお願いしたい。
3つ目は感染症対策である。昨年は中国で鳥インフルエンザ、マダガスカルでペストの流行などがあり、国内では麻疹の集団発生があった。このように感染症対策は国境を越え、かつ国内の徹底した対応が必要となる。自治体でも危機管理対応にご尽力いただいているところだ。結核については、わが国の近年の傾向として、高齢化により免疫力が低下することで発症するケースが多数を占めている。高齢者の結核患者の早期発見が重要となっている。各自治体においては、このようなハイリスク者における結核患者の早期発見のため、検診の見直しや工夫などの取り組みをいっそう進めていただきたい。今後もさまざまな感染症の発症や流行に備え、感染症に関する正しい知識と予防接種などの予防策を国民に普及啓発するほか、自治体の皆様との情報の共有と連携を密に行いながら、感染症発生時の迅速かつ適切な対応がとれるよう、対策に万全を期していきたいと考えているので、協力をお願いしたい。
4つ目は難病および小児慢性特定疾病対策である。難病法および児童福祉法に基づく医療費助成を実施しており、平成30年度からも新たに疾病の追加を行う予定としている。今後も基本方針に基づく、新たな難病の医療提供体制の整備や政府の働き方改革を踏まえた就労支援の充実など、総合的な難病対策に取り組んでいく。また、平成30年度からは難病法に基づき、都道府県が実施する事務が政令指定都市に移管される。都道府県および政令指定都市においては相互に連携し円滑な事務移管に向け協力をお願いする。
国民から信頼される健康行政の展開に全力で取り組んでいくので、よりいっそうのご理解、ご協力をお願いしたい。
健康課
■正林督章健康課長の挨拶(代読・梅澤雅男健康課課長補佐)【要旨】
たばこ対策として、特に受動喫煙防止対策について説明する。受動喫煙による健康影響は科学的に明らかである。健康日本21第二次においても受動喫煙の機会を有する者の割合の減少を目標に掲げている。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてさまざまな関係者のご意見を伺いながら多面的に検討を進めてきた。平成30年1月には厚生労働省として「望まない受動喫煙」対策の基本的考え方を公表し、現在、健康増進法の一部を改正する法律案(仮称)を今通常国会に提出することを目指し準備を進めている。公表した厚生労働省としての考え方では、望まない受動喫煙をなくす、受動喫煙による健康影響が大きい、子ども、患者等に対し、特に配慮する。施設の類型、場所ごとに対策を実施する――という考え方を基本に実効性のある対策を総合的に行う。具体的には施設の類型、場所ごとに禁煙処置や喫煙場所の特定を行うとともに、掲示の義務付けを行うこと、予算・税制等による支援を通じ、受動喫煙をなくすための環境整備を行うこととしている。
次に予防接種対策。HPVワクチンについては、平成25年6月に定期接種の積極的な勧奨の差し控えを中止して以降、HPVワクチン接種後に生じた症状に苦しんでいる方に寄り添った支援を行うとともに、副反応検討部会において継続的に安全性と有効性について審議を重ねてきた。昨年12月の審議会では、これまでの議論の整理を行うとともに、国民に対する情報提供の内容や方向について議論をいただいた。この議論を受けて先月、新しいリーフレットを作成し、厚生労働省のホームページに掲載するとともに、その旨を都道府県に連絡した。今後はこのリーフレットを用いてHPVワクチンの情報を求めている方に対し、ワクチンの安全性や有効性に関する情報提供ができるようお願いするとともに、接種を希望する方が、医療機関で適切に情報を受け取ることができることができるよう、地域での医療機関での周知をお願いする。
生活習慣病対策については、第二次健康日本21の計画が平成29年度で5年目を迎えるため、審議会で中間評価を行っており、本年夏を目途にまとめる予定である。また、健康日本21の目標項目の一つである健康寿命については、平成28年実施の国民生活基礎調査の結果に基づき、厚生労働科学研究班において算出し、現在、公表に向けて準備を進めている。
昨年も各地で自然災害が発生した。災害時こそ保健衛生が重要となる。災害発生時には自治体との連携を強化し、住民に寄り添った支援を講じていくので、各地方自治体においても災害発生に備え、さらなる準備を進めていただきたい。また、災害時健康危機管理支援チーム、DHEATの制度化について、全国衛生部長会や全国保健所長会などと連携し、議論を進めてきた。厚生労働省としては、今年度中に災害時健康危機管理支援チームの制度化に向けた準備を進めるとともに同チームの養成研修を引き続き実施することとしている。各自治体には積極的な研修受講による人材育成をお願いしたい。
当課の取り組みは地方自治体の皆様とご理解ご協力なしでは実施できない。引き続き地方自治体の皆様と連携して取り組みを実施していきたいと思うので、あらためて協力を願いしたい。
■たばこ対策について
知念希和女性の健康推進室長は、今年1月に厚生労働省が公表した「望まない受動喫煙」対策の基本的な考え方について説明した。「望まない受動喫煙」対策の基本的な考え方では、受動喫煙による健康影響が大きい子ども、患者、妊婦等に配慮し、そうした人たちが利用する施設や場所ごとに対策を実施するとしている。そのため、医療施設、小中高、大学や行政機関などは敷地内禁煙、多くの人が利用するその他の施設については屋内原則禁煙となり、一定程度の基準を設けた喫煙専用室(喫煙のみで、それ以外の行為は基本的にできない)であれば喫煙可能とする。
近年、利用者が急増している加熱式たばこの場合、副流煙は生じないものの喫煙者の吐いた煙の中に、ある程度のニコチンや発がん性物質が含まれていることが明らかになっている。知念室長は「加熱式たばこも規制の対象とすべきと考えている。一方で明らかな健康影響は分かっていないため、規制なしと紙巻たばこの規制の中間くらいの規制のあり方が適当」と考えを述べた。また、加熱式たばこの専用喫煙室については、紙巻たばこと違って飲食等喫煙以外の行為についても可能とする仕組みを考えているという。
法施行時の既存飲食店のうち中小企業や個人経営の店舗で面積が一定規模以下のものについては、別に法律で定める日までの間「喫煙」「分煙」の標識の掲示により、喫煙を可能とする経過措置を設ける予定。しかしこの場合でも、客・従業員ともに20歳未満の立ち入りは禁止する。施行期日は2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに段階的に施行するとしている。
知念室長は今後の受動喫煙対策の推進について「規制的な手段である健康増進法の改正による施設類型ごとの喫煙規制とともに、一般の方々への受動喫煙対策の必要性の理解促進や普及啓発、公衆喫煙所や喫煙専用室の設置に係る支援措置など、さまざまな施策を総合的に講ずることによって、『望まない受動喫煙』のない社会の実現に向けて進めていきたい」と話した。
■健康日本21〈第二次〉について
健康日本21(第二次)は、平成25年度から34年度までの10年間を計画期間とし、今年は上半期が終了する。現在、厚生科学審議会の専門委員会で中間評価がとりまとめに向けた作業が進められており、今年の夏を目途に公表される予定だ。目標項目は、①健康寿命の延伸と健康格差の縮小②主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底③社会生活を営むために必要な機能の維持・向上④健康を支え、守るための社会環境の整備⑤栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善――の5本柱。知念室長は「おおむね多くの項目について指標の改善が見られるものの、今の進捗状況では最終目標達成が難しいものもある。特に⑤栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善については、最も進捗が芳しくない」と話した。専門委員会の中間評価の作業においても、下半期に向けこの部分について重点的に取り組みを強化すべきとの意見があるという。⑤は個人の生活習慣の具体的な改善に関する部分だが、健康日本21(第二次)は「社会環境の整備によって個人の健康を達成する」のが基本的な考え方。厚生労働省としても後半の5年間に、④の社会環境の整備とともに⑤についてより重点的に取り組みを進めていくという。
■保健活動について
加藤典子保健指導室長は、平成28年3月の「保健師に係る研修のあり方等に関する検討会」の最終取りまとめに盛り込まれた、保健師の能力の成長を段階的に整理したキャリアラダーの策定状況を報告。昨年6月の時点では、29都道府県、保健所設置市・特別区では28か所にとどまっているとして、「最終取りまとめを活用して、効果的な人材育成体制の構築と人材育成をいっそう推進してほしい」と求めた。
多発する自然災害により被災住民の健康支援のニーズが高まっている中、急性期だけでなく、住環境の変化による健康問題など、復興ステージに応じた新たな課題への対応が求められている。昨年12月には、これらの課題に対応できる保健師の派遣について、保健指導室から全国の自治体宛に協力を依頼する通知を発出した。加藤室長は「厚生労働省として引き続き被災市町村の支援に努めていく。各地方公共団体におかれては必要な支援の協力をお願いしたい」と話した。
がん・疾病対策課
■がん対策について
昨年、閣議決定された「がん対策推進基本計画」は、「がん予防」「がん医療の充実」「がんとの共生」の3つの柱としている。また、これらを支える基盤の整備として「がん研究」「人材育成」「がん教育・普及啓発」を掲げている。
このうち「がん予防」については、1次予防として「喫煙の健康影響に関する普及啓発活動」や「肝炎ウイルス陽性者への受検勧奨・普及啓発」、2次予防として「効果的な受診勧奨等の検討」「精度管理向上の取組」「職域におけるがん検診に関するガイドライン(仮称)の策定」等に取り組むこととしている。「がんとの共生」については、「緩和ケア、がん患者の就労支援・社会課題への対策、相談支援・情報提供、社会連携に基づくがん対策・がん患者支援、ライフステージに応じたがん対策」に取り組み、がん患者が住み慣れた地域社会で生活をしていく中で、必要な支援を受けることができる環境を整備することとしている。
平成30年度予算案では、がん対策の推進に358億円を計上した。内訳は、がん予防に166億円、がん医療の充実に166億円、がんとの共生に25億円。がん予防の中では、新たなステージに入ったがん検診の総合支援事業(がん検診の個別の受診勧奨・再勧奨に係る経費、子宮頸がん・乳がん検診の初年度の受診対象者に対するクーポン券の配布、精密検査未受診者に対する受診勧奨に係る経費)として、15.5億円を計上している。
■リウマチ・アレルギー対策について
アレルギー疾患対策は平成29年3月に告示された「アレルギー疾患対策基本指針」に基づき、正しい知識の普及・啓発や医療体制の整備などが進められている。普及・啓発については、アレルギー情報センター事業として日本アレルギー学会に委託しており、平成30年度予算案では4,100万円を計上している。同事業は、アレルギー疾患に関する正しい情報を提供するウェブサイトの作成、リウマチ・アレルギー疾患の相談窓口設置、施設関係者に対する研修会などを行うもの。
また、4月には「アレルギー疾患医療提供体制の在り方に関する検討会」を立ち上げて医療提供体制について検討し、7月に報告書「アレルギー疾患医療提供体制の在り方について」をとりまとめた。報告書では、国立成育医療研究センターと国立病院機構相模原病院をアレルギー疾患医療の全国的な拠点となる中心拠点病院に位置づけるとともに、都道府県拠点病院を1、2か所選定することなどを盛り込んだ。都道府県のアレルギー疾患対策に携わる関係者で構成する都道府県アレルギー疾患連絡協議会の役割についても示した。これを受けて平成30年度予算案では、中心拠点病院における都道府県拠点病院の医師への研修、全国拠点病院の連絡会議の開催などに1,700万円、アレルギー疾患都道府県拠点病院モデル事業(4、5か所を予定)として3,100万円を計上した。
結核・感染症課
■エイズ・性感染症対策について
平成28年のHIV感染者・エイズ患者の報告数は合計1,448件で、そのうち437件はエイズとなっている。野田博之エイズ対策推進室長は「検査を行った時点で既にエイズになっている方々が減るように、早期発見について引き続き尽力をお願いしたい」と求めた。夜間・土日検査については傾斜配分の手当てを出すなど、HIV検査受検者のアクセスをよくするための方策も取られている。一方、抗HIV薬の進歩により、早期に治療を開始することで他者への感染を防ぐとともに、感染前とほぼ同様の生活を送れるようになってきた。しかし、そうした中で、HIV・エイズへの偏見により、透析医療や歯科医療において他の疾患の治療が拒否される事態も生じている。野田室長は「抗HIV薬の長期使用による副作用で腎障害をきたすことがあり、透析導入が必要なケースの増加が懸念されている。また、患者の家の近くにある歯科診療所での受診が想定されるため、そうした偏見の払拭をするとともに、標準感染予防策を実行することが必要となっていく」と話した。歯科医療については、日本歯科医師会から各都道府県歯科医師会に協力要請がなされているという。
梅毒については近年、報告数が増加しており、速報値では昨年1年間の報告数は5,770人となった。女性の占める割合も増えている。厚生労働省では普及啓発とともに、どういう人に感染が広がっているかなどの実態の究明に努めているという。
難病対策課
■川野宇宏課長の挨拶【要旨】
難病・小児慢性特定疾病対策については、難病法、児童福祉法に基づく新たな医療費助成が開始されてから約3年が経過した。あわせて旧制度からの対象患者に対する経過措置が終了した。これらの対応への協力に感謝申し上げる。
平成30年度には医療費助成の対象疾病の追加に加え、新たな医療計画体制の推進、難病に基づく事務の指定都市への権限委譲などが予定されている。医療費助成の対象疾病については、この4月から指定難病は1疾病追加され331疾病になった。小児慢性特定疾病は35疾病が追加され756疾病になった。
新たな医療提供体制の整備については、できる限り早期に正しい診断ができること、診断後はより身近な医療機関で適切な医療を受けることができること、小児慢性疾病の児童の移行期医療にあたり小児と成人の診療科が連携することなどを掲げている。現在、各都道府県で平成30年度に向けていろいろと検討をいただいていることと思うが、それぞれの地域の実情を踏まえた医療提供体制の整備を進めてほしい。
難病関係事務の指定都市への権限委譲については、この4月からになる。指定都市に住む受給者への支援が切れ目なく継続されるよう、適切な事務の遂行をお願いしたい。
ハンセン病対策については、日ごろからハンセン病の元患者の方々への福祉、偏見差別の解消などの各種取り組みに尽力いただいている。今後とも、より一層の取り組みをお願いしたい。
リンク