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乳幼児健診記録の電子化について議論 ~「データヘルス時代の母子保健情報の利活用に関する検討会」が初会合~

4月25日、厚生労働省の「データヘルス時代の母子保健情報の利活用に関する検討会」の初会合が開かれた。データヘルス改革では「健康スコアリング」など既に動いているものもあるが、いよいよ母子保健分野の議論が始まった。

データヘルス改革では、これまで縦割りで相互につながらなかった健康・医療・介護施策のICTのインフラを整備し、利活用することを目指している。これにより、AIを駆使した現場の最適な診療を支援するシステムの構築や、医療・介護スタッフの個人データの共有などが可能となる。改革は9つのプロジェクトチーム――①保健医療記録共有②救急時医療情報共有③PHR・健康スコアリング④データヘルス分析⑤乳幼児期・学童期の健康情報⑥科学的介護データ提供⑦がんゲノム⑧人工知能〈AI〉⑨審査支払機関改革――に分けて進んでいる。このうち「⑤乳幼児期・学童期の健康情報」は最後に追加されたため、外部識者を交えた本格的な議論はこの日が初めて。

検討会は、乳幼児健康診査の記録等のうち、最低限電子的に管理されるべき情報に関する様式の標準化(ミニマム・データセット)の策定が目的。記録電子化の促進等関連する事項についても検討を加える。

冒頭の挨拶で、山本麻里子ども家庭局審議官(内閣官房内閣審議官併任)は「乳幼児期・学童期の健診情報は、個人の健康情報の管理、自治体等の関係機関における情報の引継ぎ、ビッグデータの利活用を通じた疾病の研究等の観点から大変重要な課題。乳幼児の健診等の項目の標準化、その利活用にあたり検討すべき事項について積極的に議論してほしい」と述べた。座長には山縣然太朗委員(山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座教授)が選ばれた。

妊婦健診や乳幼児健診の実施内容は省令・告示・通知などで定められている。しかし、健診項目や記載方法については標準化されていないのが現状だ。また、紙台帳で管理している市町村も多く、健診情報を効果的・効率的に管理・活用する仕組とはなっていない。こうしたことから電子的に管理すべき乳幼児期・学童期の健診情報を標準化する必要があり、事務局では3つの論点――①市町村が電子的に記録する情報②電子的記録の管理・活用③電子的記録の連携のあり方――を示した。

このうち、「市町村が電子的に記録する情報」については、3つのレベルに分けて整理。乳幼児健診に関する通知や母子健康手帳の省令様式で示している健診項目を最も広い範囲として、そこから市民が自己情報として閲覧できる情報(標準的な電子的記録様式)に絞り、さらにそこから自治体間で情報連携をする情報(最低限電子的に管理するべき情報)に絞る案を提示した(資料4)。

渡邉洋子委員(全国保健所長会)は、「(資料4の図〈下記リンク先参照〉によれば)最低限電子的に管理するべき情報は身長・体重などの数値に限られてしまう可能性がある。自治体間で本当に共有したいのは虐待の情報などではないか」と指摘。データ化できない情報が共有されないことを危ぶんだ。曽根智史委員(国立保健医療科学院次長)も、「本人に開示しなくても、虐待など行政として必要な情報はある」と、資料4の図が現状の問題意識と合っていない点を指摘した。

中板育美委員(日本看護協会常任理事)は、産後うつなど周産期や育児期の親の問題が子どもの健全な成長に影響を及ぼす実情があるとした上で、「将来子どもが閲覧したときにマイナスの影響を与えないようなデータの整理を」と述べ、本人・家族への気遣いも必要であるとした。他の委員からも、将来子どもに見られることを懸念して、母子手帳に詳しいことを書かれるのを望まない親がいるとの指摘があった。

山縣座長は「電子化して将来に残してもいい情報もあり、残さないほうがいい情報もある。一方で、子どもの保護ということでは今すぐに必要な情報もある。まさにこうした点をこの検討会では議論してほしい」と話した。

事務局からは、電子化の範囲以外にも、乳幼児健診における標準的な健診項目案が示された。案は健康調査票(通知)や母子健康手帳(省令)に基づく項目から引用してまとめたもの(資料5)で、これについては次回以降、詳しく議論していく予定だ。

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