第2回デジタル活用共生社会実現会議
1月25日、総務省と厚生労働省の「デジタル活用共生社会実現会議」(座長=村井純慶應義塾大学環境情報学部教授)の第2回会合が開かれ、二つの部会の進捗状況などが報告された。
障害者や高齢者など多様なライフスタイルを持つ人々がICTの利活用で豊かな人生を享受できる社会を構築する――これが総務省の「スマートインクルージョン構想」だ。構想実現に向け、支援策や普及啓発のあり方を検討しているのが「デジタル活用共生社会実現会議」。昨年11月に初会合を開いた後、「ICT地域コミュニティ創造部会」(部会長=安念潤司中央大学法科大学院教授)と「ICTアクセシビリティ確保部会」(部会長=石川准静岡県立大学教授)を立ち上げ、個別に議論を進めてきた。
この日、二つの部会からこれまでの議論の進捗状況が報告された。
地域ICTクラブなどについて議論 ~ICT地域コミュニティ創造部会~
デジタル活用支援員(仮称)の仕組みや地域ICTクラブの普及・活用方法などを検討してきた地域コミュニティ創造部会。安念部会長はデジタル活用支援員について「地域に根付き誰もが気軽にICTに関する相談ができるICT版の民生委員のような存在」と説明し、支援員の具体例として情報通信系企業の従業員などを挙げた。部会の意見ではシニアの積極活用や支援員に対するインセンティブの必要性、行政の関与を求める声などが聞かれたという。
一方の地域ICTクラブのイメージは「地域で子ども・学生、社会人、障害者、高齢者等がモノづくり、デザイン、ロボット操作、ゲーム、音楽等を楽しく学びあう中で、プログラミング等のICTに関し世代を超えて知識・経験を共有する仕組み」というもの。安念部会長は「遊び感覚のものでも、専門的人材の育成でもいい。商店街などと連携するのもいいし、障害者・健常者の溝をICTの力で埋める試みでもいい。クラブにはさまざまな形態がある」と強調。部会において、地域ICTクラブ立ち上げに必要なヒト・モノ・場所、講座の内容や運営方法などをまとめた「ガイドライン」を検討中であると報告した。
ICT共生社会コンソーシアムなどについて議論 ~ICTアクセシビリティ確保部会~
ICTアクセシビリティ確保部会の検討項目は、①(ICTアクセシビリティに関する)未来イメージの提示②エビデンスベースの当事者参加型の開発スキーム③障害者等の就労支援④情報アクセシビリティの確保――の4つ。この日までに②と④を中心に議論を重ねており、特に②の「エビデンスベースの当事者参加型の開発スキーム」では、その運営にあたる「ICT共生社会コンソーシアム」の在り方の議論に多くの時間を割いてきた。コンソーシアムの構成メンバーにはメーカーや介護福祉関係団体・企業などを想定しており、障害当事者(支援者も含む)参加型のICT関連製品・サービスの企画・開発・普及の支援を行うとともに、「障害関連情報ポータルサイト」を運営するとしている。
石川部会長はコンソーシアムに係る基本的な論点を▶コンソーシアムの構成▶障害者関連データの収集とモニターの確保▶障害関連情報ポータルサイトの在り方――に整理し、各論点に関する部会の意見を報告した。
コンソーシアムの構成については、従来の支援機器メーカー・サービス事業者などを中心としつつ、「これまで採算性などの観点から参入してこなかったICT関連のメーカーなどにも拡大するのが望ましい」との意見のほか、その市場性について、IoTセンサーやAIなどを活用した障害者の個別データの収集を通じて革新的な技術開発を期待する声などが聞かれた。
障害者関連データの収集に関する意見では、障害者関連団体からの要望やメーカー・研究機関が入手した障害当事者のデータなどの既存データ共有化の重要性、IoTやAI機器・サービスを通じて新たに入手する障害当事者データの集積(大規模データベース)への期待などがあった。なお、障害当事者のデータ集積のためには障害者モニターの確保が必要となるが、これについて石川部会長は倫理審査や倫理研修などの論点整理が必要であるとの認識を示した。
障害関連情報ポータルサイトに関しては、障害種別によるデータ整理だけでなく「困り事」などによる分類も必要との指摘があったと報告した。
検討項目④の「情報アクセシビリティの確保」については、既にアクセシビリティの確保を一般法で規定している米国などの例を参考に、「わが国でも公的なICT機器・サービスに関してアクセシビリティへの対応を義務化すべき」などの意見が聞かれたという。
同会議は引き続き部会での検討を進め、今年度中の最終とりまとめを目指している。
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