全国高齢者医療主管課(部)長及び国民健康保健主管課(部)長並びに後期高齢者医療広域連合事務局長会議
3月12日、厚生労働省の「全国高齢者医療主管課(部)長及び国民健康保健主管課(部)長並びに後期高齢者医療広域連合事務局長会議」が開かれた。保険局長のあいさつと資料を掲載する。
樽見英樹保険局長のあいさつ【要旨】
きょうは国民健康保険や後期高齢者医療制度の現状と課題、平成31年度に予定している事項について説明したい。
まず、国民健康保険についてである。制度創設以来の大改革といえる国保改革だったが、平成27年の改正法の成立以来、皆さまのご理解とご協力を得ながら施行準備を進め、昨年4月に施行を迎えることができた。新制度の円滑なスタートに向けて、都道府県と市町村の間で丁寧に合意形成を図っていただいた結果、大きな混乱もなく概ね実施できたと考えている。今般の改革は、国民皆保険制度を安定的で持続可能な制度にするために必要なものであり、新たな国保制度の安定的な運用について厚生労働省も引き続き全力で取り組みを進めていきたい。
新制度2年目となる来年度に向けても、都道府県と市町村の皆さまとの間で納付金、保険料水準等について、さまざまな検討をいただいた。この春には、新制度1年目である今年度の決算も出ることになるが、その結果も踏まえつつ、将来に向けて安定期な制度を運営できるよう、都道府県と市町村で丁寧にコミュニケーションをとっていただければと考えている。
平成31年度予算案では、平成30年度から投入している約1,700億円を引き続き確保していくところであり、今後も安定的な制度運用のために必要な予算ということで進めていく。また、今年度から本格実施となる保険者努力支援制度の中でも、糖尿病性腎症の重症化予防、個人へのインセンティブなど、医療費適正化について取り組みを行う都道府県、市町村を評価し、財政支援を行う。各指標に関する今年度の取り組みをそれぞれ都道府県、市町村においてしっかりと振り返り、その状況や課題を把握し、来年度以降の取り組みの評価の充実につなげていただけるようお願いする。
今国会には、「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案」を提出したところだ。医療保険の改正といいながら一部負担の変更などがないと言われる一方で、医療の効率化・情報化に向けては大きく一歩を踏み出す法案だと考えており、早期の成立を国会にお願いしたいと考えている。
この法案が成立すれば、オンライン資格確認の平成32年度中の導入に向け、今年はシステム改修などの準備を進めていく年となる。制度あるいは保険者をまたがって被保険者を一元的に管理するための中間サーバの再構築、国保の被保険者番号の個人単位化など、取り組むことは多岐にわたる。市町村や後期高齢者医療広域連合の皆さまにもご尽力いただくことが多いが、私どもとしても丁寧に情報共有し、丁寧に説明することを心がけていきたい。
次に後期高齢者医療制度についてである。後期高齢者医療制度の創設から10年となった。各都道府県の広域連合、あるいは市町村の皆さま方の多大なるご尽力のお蔭をもって、高齢者の方々が安心して医療を受けられる制度として定着してきたと考えている。この制度は国民全体の支え合いのもとで、成立している制度である。今後、2022年からは団塊の世代が75歳以上となり、さらなる高齢化が進む。また、日本の現役世代の人口は急減していくということも予測されている。こうした中で、社会の活力を維持し、安定的な制度としていくために、私どもとしてもさらに全力で取り組んでいきたいと考えている。
来年度については、これまで段階的に見直しを実施してきた保険料の特例措置について、保険料の均等割りの軽減特例の見直しというものを行うこととしている。平成27年の医療保険制度改革骨子を踏まえ、制度発足時の暫定的な措置として実施してきた均等割の軽減特例について、介護保険料軽減の拡充、あるいは年金生活支援給付金の支給の実施時期と合わせて世代間の負担の公平を図る観点から見直しを行うことにしたものである。今回の見直しの趣旨や内容の説明等については、きめこまかな対応をお願いしたい。
国会に提出中の法案の中では、高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施を推進する枠組みの構築ということを盛り込んでいる。人生100年時代の到来を見据えて、健康寿命の延伸を図る取り組みを重視することが求められているが、とりわけ高齢者においては、身体的な課題、認知機能あるいは社会的なつながりの低下といった多面的な不安を抱えるケースも多く、フレイルのおそれのある方も多いことから、一人一人の状態やニーズに沿った適切な予防事業の実施が求められている。これを実現するために、高齢者の保健事業、国保の保健事業、介護保険の介護予防事業について、市町村が一体的に実施するスキームを求めるものだ。地方自治体においては、できる限り取り組みを進めやすい環境を整備していただきたい。また、国保データベースを活用し、ハイリスクの方を把握する等、効果的な実施を図ることが重要である。各自治体において、地域の実情を踏まえて積極的な取り組みを進めていただくようお願いする。
今までは、保険料をしっかり集め給付することが保険者の役割と考えられてきたと思うが、これからは人生100年時代を見据え、また医療保険の財政が非常に厳しくなってきている中で、加入者の健康を守ることが保険者の役割になってくるのではないか。国民皆保険を実現したいという国民の願いの根底には、日々の健康を皆で支え合って守りたいという気持ちがあったと思う。その原点に返るということかもしれない。国民皆保険制度を堅持して次の世代に引き継いでいくことは、この時代に生まれ合わせている者の責務である。これからも国保制度、後期高齢者医療制度の円滑な運用のために、皆さま方と力を合わせて取り組んでいきたいと考えている。
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