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地域共生社会検討会で財政支援の在り方を提示

10月15日、厚生労働省の「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」(座長=宮本太郎中央大学法学部教授)の6度目の会合が開かれた。中間取りまとめから約3か月ぶりの再開で、新たな事業の内容や財政支援について意見を交わした。

検討会は包括的な支援体制を全国に整備する方策について、今年の5月16日から5回にわたり議論を重ねた。7月19日の中間取りまとめでは、これまでの福祉政策を「経済的な意味での生活保障やセーフティネットの確保は大きく進展し、高齢、障害といった対象者別の制度の専門性は高まった」と評価する一方で、8050 問題のような複合的なニーズに対応できないなどの課題があると指摘。現行の現金・現物給付の制度に加え専門職の伴走型支援や地域の多様なつながりを含めた包括的な支援体制の必要性を説いた。その上で、包括的な支援体制に求められる機能を①断らない相談支援②参加支援(社会とのつながりや参加の支援)③地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援――の3つに整理した。財政支援については、制度ごとに異なる在り方を整理して新たな仕組みを構築すべきとした。

この日は中間取りまとめを踏まえ、3つの支援機能の詳細が示された。市町村は3つの支援機能を一体的に行う新たな事業を創設し、「手あげに基づく任意事業」として実施する予定で、①と③については財政支援の対象となる。

新たな事業の入り口に当たる①断らない相談支援は、現行の相談支援事業(地域支援事業=介護、地域生活支援事業=障害、利用者支援事業=子ども、自立相談支援事業=生活困窮者)を一体的に行う事業として再編し、本人・世帯の属性にかかわらず相談を受け止める機能を担う。財政支援を受けるには、▶介護・障害・子ども・生活困窮の相談支援に係る事業を一体的に実施する▶①から③までの機能を持つ▶市町村内に最低1か所「断らない相談支援」の窓口を設置する――の要件を満たす必要がある。

②参加支援(社会とのつながりや参加の支援)は、社会参加・就労支援・居住支援などで、断らない相談支援がスムーズに進行するように本人・世帯と社会をつなぎ、継続的な関りの接点を確保する機能。属性ごとの事業として既存のメニューにつなげればよいことから財政支援の対象にはならない。ただし、8050問題など既存の制度では利用できる資源がない狭間のニーズについては、生活困窮者自立支援制度の任意事業のメニューを念頭に新たに規定し直す方向で検討する予定だ。

③地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援は、ケア・支え合う関係性を広げ交流機会や参加を生み出すコーディネート機能と、住民同士が出会い参加できる場や居場所の確保の2つの機能があり、これらに必要な経費が交付される。

議論の中で、朝比奈ミカ構成員(中核地域生活支援センターがじゅまるセンター長、市川市生活サポートセンターそら主任相談支援員)は、新たな事業を「手あげに基づく任意事業」とした意図について質問した。これについて事務局は、「市町村の体制をしっかり作ってもらう事業として考えており、試行錯誤もあり時間がかかる。その意味ではモデル事業の素地があり熱心に取り組んでいる自治体を念頭に置いたが、体制がととのった自治体であればしっかり事業に取り組んでいただきたい」と答えた。

田中滋構成員(埼玉県立大学理事長、慶應義塾大学名誉教授)は、「断らない相談支援というが、相談に来ない人もいる。自治体が地域課題を見つける能力を持たないと、『相談に来ないから対象ではない』となってしまう」と指摘した。事務局は「大変重要な視点で、普段の住民の方の気づきをいかに自治体がしっかり受け止めフォローしていくかということ。それには地域づくりを進めていくことが大前提となる」と話し、3つの機能の1つである③地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援の中でフォローしていくとの認識を示した。

この日は、地域共生社会の実現に向けた体制整備について、兵庫県芦屋市と滋賀県高島市から取り組み事例が報告された。芦屋市からは、こども・健康部健康課の細井洋海保健師と地域福祉課の岡本ちさと保健師が参考人として出席、保健師の立場から取り組みを報告した。

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