WEB連載

フランスの親子まるごと支援

第1回若者が選び取れる福祉

「福祉とは、置かれた状況に耐えて生きることから、自分で積極的に選び能動的に生きることを可能にすること」とフランスでは言われている。子どもであっても自分の人生を能動的に生き選択ができること。その根拠は子どもの権利条約の第3条である。英語の the best interest of the child が日本語では「児童の最善の利益」と訳されている。これは大人が子どもにとっての利益を判断しかねない表現とも言える。フランス語訳では「子どもにとっての関心」、つまり、常に判断の根拠にして、優先順位の一番におくものは「子どもにとっての関心」と考えられている。
筆者は日本で生活していたとき、首都圏で生活保護のケースワーカーをしていたが、一番つらかったのは相手が「状況に耐えて生きている」ことを知っていながら、「積極的に選び能動的に生きる」方法を提案できなかったことだ。あるとき、母子家庭の母親が、ワンルームで恋人と過ごしているのを見ることに耐えられず、駅前に夜遅くまで座っている子どもを保護しようとしたことがあった。母親が恋人の存在を否定し話が進まない間に子どもと連絡が取れなくなってしまった。またあるときは、施設で性被害にあった子どもに他の施設に移る提案ができなかった。「他に何もないの?」と子どもに言われたこともあった。大人たちの事情で「子どもにとっての関心」を後回しにしてしまっていた。子どもにとっての関心が優先されなければ子どもを守ることはできない。
フランスでは、親や学校以外にも子どもが話せる相手であるたくさんの大人が専門職として配置されている。(図1)「子どもが話したいと思える人に出会えたらいい」という考え方なので、話す相手は学校の外の関係機関にいる人であっても構わないのだ。学校や親と連携して子どもを気にする人たちのネットワークをつなぐ。これらの機関は親の相談にも乗ることができ、「ティーンエイジャーの時期は親子の関係性を築き直す必要があるため誰にとっても簡単ではありません」と書かれた冊子が親向けにも配られている。本連載の準備号ではティーンエイジャーの家と性的健康センターについて紹介したので、今回は他にどのような専門職や関係機関があるか紹介する。いずれも公的財源によって運営されており子どもたちは無料で利用でき、親の了承なども必要ない。

福祉は困難な状況にある人を「助ける」ことではない。権利は誰にでも空気のようにあるもので、それが侵害されている状況を「正す」手続きが福祉である。全ての人の尊厳が守られ、権利が侵害されることがない世の中をつくることが使命であると考えられている。つまり、家に居場所がないとしたら、子どもの関心に沿って家に居場所があるように家族関係を調整し、子どもと親それぞれをケアしてお互いが自分にとっての幸せの形を実現していけるよう支える役割が求められている。
世界人権宣言第26条の教育の目的の日本語訳は「人格の完全な発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化」であるのに対し、フランス語訳は「その人らしさの開花、人権と自由が尊重されることを確かにすること」である。つまりフランスでは、教育を受ける条件を正して整えることで、その人らしさが開花することを目指している。
フランスの子ども若者分野の福祉では、多くの場合国家資格を持つエデュケーターが中心的な役割を担っている。エデュケーターは「教育的支援」を行う。社会の中での在り方を支え、継続的に親子に関わりながらケアのコーディネートも行うソーシャルワーカーの一職種である。養成講座では、全ての人が持つ潜在力を見つけ引き出すこと、親と子どもを愛し続けるエデュケーターとしての在り方について学ぶ。

路上エデュケーター

路上エデュケーターは、事務所を持たず3~4人のチームでそれぞれが担当地区を受け持ち、子どもや若者が外にいる時間帯に活動する。この仕組みは、第二次世界大戦後、仕事帰りの大人たちがボランティアとして「浮浪児」に寝泊まりする場所を確保し、地元の商店にかけ合って仕事を与えた活動が元となっている。子ども専門裁判官や児童精神科医が、少年院や精神科病棟ではなく地域で子どもたちの育ちを支えようと国に訴え制度化して実現した。以前は勉強に遅れがある子どもや、人間関係がうまくいかない子どもは児童精神科医が対応していたが、教師でも監視するような立場の人でもない「社会の中での生き方」を教える専門職が必要であるという認識からエデュケーターの資格が生まれた。

道路を自転車で走る人たち  中程度の精度で自動的に生成された説明
パリ市の路上エデュケーターチーム

1935年に「浮浪児は何よりもまず、不幸な子どもである」と非行からの捉え直しがあり、保護の対象とされた。その流れの中で、エデュケーターが家庭に通う在宅支援も制度化される。学校に行かず職業訓練にもついていない、いまでいう不登校やニートのような状況は「家庭内バガボンド」と呼ばれ、法律で「精神的危険にさらされている子ども」と規定され保護の対象となる。第二次世界大戦後からは浮浪児たちにアクティビティや旅行を提案し連れて行く活動をしており、「文化とバカンスについての権利が行き届くことを確かにする」ことを目的に、現在もエデュケーターたちはバカンスに出掛ける予定がない子どもがいないか全員の状況を確認し、課外活動がない子どもにアクティビティを提案している。
子どもの権利が親次第、地域次第、出会い次第にならないよう、全ての子どもにウェルビーイングが確保されるよう、学校などの公的機関が要となり、民間機関に所属する路上エデュケーターなどの専門職が連携し福祉を子どもたちに届けている。日本では「危険がない限り家族に任せる」という対応なのに対し、フランスでは「権利が行き届いていることを確認する」という姿勢がある。
路上エデュケーターは、例えば中学校の休み時間に子どもたちと過ごしたり、学校でたばこやアルコールや喧嘩などリスクに関するディベートの授業を行なったりしている。地域にいるので放課後でも気軽に相談できる。親たちも「近所のお兄ちゃんが路上エデュケーターのおかげで就職した」「悪いことをして警察に捕まることもあった子どもが路上エデュケーターのおかげで立ち直った」と信頼を寄せている。警察に捕まったとき、親ではなく路上エデュケーターの電話番号を警察に伝え、迎えに来てもらう子どもたちもいる。
また、若者たちとアルバイトをしながら、将来就きたい仕事を一緒に探したり、6万円程度で自動車免許を取得できる自動車教習所を自分たちが運営しているので、免許を取る練習を通して若者たちの強みと苦手なことを知り、よりよくサポートできるようにしたりするエデュケーターもいる。

パリ市の路上エデュケーター、エルアンさんへのインタビュー

川の隣に立っている男性
インタビューを受けるエルアンさん

● どんな役割で、どのように活動していますか?

子どもたちや若者たちが社会の中で居心地良く過ごせるよう支えることが自分の役割です。もちろん、自分たちが専門ではない分野では、子どもや若者たちが専門的な支援を得られるようにするコーディネーターの役割も担います。
平日の夕方、そして土日とバカンス期間が路上エデュケーターとしての活動が特に活発な時です。子どもや若者たちのグループを旅行に連れて行くなど、さまざまなアクティビティを一緒にします。

● 学校や家族とはどのような関わりですか。

学校から「いまはこんな問題があるから一緒に解決してほしい」と頼まれることもあります。例えばいじめのような空気ができ始めているかもしれないときは、いじめに関する映画を上映して、それをクラスで話し合う時間を設けるなどの活動をしました。そうすることで、子どもたちが関連した話や相談がしやすくなります。
子どもや若者だけでなく、家族に会いにいくことも多くあります。若者が親と意見が対立したときや、家の中に問題があるときに親に話してほしいと私たちが呼ばれたりします。私たちは、こうあるべき、こうした方がいいといったアドバイスではなく、それぞれが描いている希望が実現するようにします。サポートの枠組みを示し、その範囲内での支援をするのではなく、相手が希望する方向に一緒に歩くという働き方なのです。

● どんな人が路上エデュケーターに向いていますか?

チームには男女、若い人や年配の人、いろいろな人がいることが、子どもが話しやすい相手を見つけ、さまざまな視点から支えるためにも大事だと思います。例えば性に関する話は同性の方が話しやすいなど、どんな相手を望むかは子どもによって違います。妊娠の検査に連れて行ったり、中絶(フランスは未成年でも中絶に保護者の同意や同伴は必要ないので)に付き添ったりすることもありました。妊娠の可能性があるから検査をしたいという段階から、悩んでいる過程、中絶した後の話も聞きました。女性のエデュケーターは、生理が重い気がするから婦人科健診に一緒に来てほしいなどの相談をよく受けています。私は若い男性から、パートナーとの関係についての悩みや、成長していく過程の中で性の相談を受けることも多いです。
また、保護者から、自分の子どもが売春しているのではないかと相談されることもあります。最近関わった二人は15歳と17歳だったのですが、最初は薬物や売春に関わる人間関係の中に囚われていて、エデュケーターと関わりを持ちたいという状況ではなく支援活動は難しい面がありました。二人は言いたいことも言えないような状態でしたし、私たちにとっても他区や他県で売春していると状況がよく分かりません。抜け出したいときはいつでも手伝うこと、さまざまな方法があることも伝えました。このケースの場合は、いまの状況は安全ではないと二人に伝え、無事保護することができました。売春被害の状況にあった未成年者専門の施設に保護しましたが、保護した子どもや若者が施設から脱走することも多いので、まだこれからどうなるか分かりません。

● 大人と話したがらない、エデュケーターに口を開かないような子どもや若者はいないのですか?

子どもたちはエデュケーターがどんな人たちなのかは十分知っていますし、話したがらない子どもや若者には会ったことがありません。エデュケーターと子どもや若者たちの間では共通の信頼のようなものがあって、それは私が働き始めるずっと前から受け継がれてきたのだと思います。子どもたちは、エデュケーターとの関わりは強制されていないのでどうするかは自由ですが、これまでこちらから関わって、拒否されたり関係を築きにくかったりすることはありませんでした。私たちの団体はこの地域で46年前から活動していることもあり、人々はエデュケーターとは子どもと若者がより良く育っていけるようにするためにいる人たちだと十分知ってくれています。

● 路上エデュケーターという職業の魅力は何ですか?

この職業の魅力は、若者が「こんなことがしたい」「こんな仕事に就きたい」という希望を叶えていくのを見ることができることです。最近、自分が関わっていた若者が自分の会社を立ち上げ、いまは順調に周囲の信頼を得て活動しています。相手にとって必要な時間を一緒に過ごして、相手が見ている夢を一緒にみて、相手の夢がどんどん叶っていくのを隣で見ることができるのは、なんて素敵な仕事なんだろうと思います。

ネットエデュケーター

ネットエデュケーターは、親に車を出してもらわないと自ら出掛けることもままならないような地域に特に必要であるとされ、全国規模になった制度。両親の離別によって生じる養育費の代理請求や立て替え、子どもが別居している親やその親族に会える安全な面会交流スペースの運営、経済的に旅行に行けない家族に家族旅行代を出すなど、地域の家(後述)の活動を担っている社会保障の家族部門という部署のひとつのチームが始めたサービスが、その後国に認められ全国に広がったものだ。フランスのソーシャルワーカーはケースワークだけでなく、ニーズに気付いた内容について福祉をどう提供するか企画立案しなければならないので、このように革新的な福祉が次々と誕生する。
工夫している点は、全て、地域の機関で働いている専門職が担うこと。直接会って話すこともできるし、親にとっても専門職でありどこに所属している人か明確なので安心できる。専門職が就労時間の一部をネットエデュケーターとして契約して活動する。就労時間内で働くので24時間対応するわけではない。ネットエデュケーターのプロフィールは市のホームページに公開されていて(図2)、子どもや親や、子どもと関わる職業に就く人たちはSNSを通じて相談することができ、ネットエデュケーター自身もそれぞれがインターネット上でリスク情報を見つけサポートにつなげている。例えば子どもから「親と喧嘩して家を出ちゃったけれど、どこに行けばいい?」という相談があったら、近くにいるエデュケーターが迎えに行けるようにしている。そのため、どの区にもくまなく配置されネットワークを張っていることが重要であるという。

図2 パリ市のネットエデュケーターのプロフィール公開の様子
(写真:パリ市ホームページより)

シェルター

安全に家出できる場所として学校の看護師などに紹介されて若者たちが来る場所がシェルターだ。未成年者を72時間保護することができ、その間に他の場所で家族との調整が図られる。家出でなくても「家に帰りたくない」などと度々相談に通う若者もいる。シェルターのエデュケーターたちは「子どもは一回しか助けを求めません。そのときにしっかりと応えることができなければ子どもはもう助けを求めなくなります。そうすると問題はより複雑になるのです」と言う。家出した子どもをそのまま家に帰してしまうと家族とさらに喧嘩し、孤立してしまう可能性がある。早期に対応し、関係性の回復を図ることを試みている。
シェルターは、県に1か所しかないことや、誰でもアクセスできる場所にあるとは限らないことが今後の課題だ。
子どもが家を出たいと希望しても、その多くは短期間で問題が解決し子どもが帰宅することが多いので、シェルターは児童相談所や一時保護受け入れ機関の負担を軽減する役割も担っているといえるだろう。


シェルターのエデュケーターたち

若者就労支援

若者就労支援の相談窓口には、ソーシャルワーカーや心理士がいて現金給付、就労支援、研修を提供している。フランスでは、生活保護は25歳からしか対象にならないため、ここが義務教育を終えた16歳から25歳の若者にとって身近な相談窓口となる。若者専門の福祉事務所兼、職業安定所兼、ケアサポートを行うような場所である。
フランスでは、大学や大学院の授業料は無料であり、専門学校にも無料のところがたくさんある。高校や大学にランクはないので、日本の高校生のような塾通いや受験勉強の必要もない。社会保障の家族部門が若者の職業訓練に必要な道具があればその費用を出すので、大学の医学部であってもデザイナー専門学校であっても、家の経済力に左右されず子どもが望む学びができる環境がある。奨学金は経済状況に応じて中学校から支給され返済する必要はない。若者用マンションは4~6万円程度の家賃で住むことができ、それぞれ担当のソーシャルワーカーがいる。子どもや若者の自立へのハードルは日本と比べ低いが、例えば仕事を短期間で辞め、何がしたいか分からなくなってしまったような場合はここでサポートを受けながら複数の職業実習を体験できるようになっている。

若者情報センター

パリ市に24か所ある若者情報センターでは、学業、職業訓練、アルバイト、ボランティア、免許講習などの情報を提供する。さまざまなレジャーや旅行の割引クーポンがもらえるので、子どもや若者たちがよく行く場所のひとつだ。こうした場所にエデュケーターや心理士がいて、必要に応じてケアや支援につなげられるように工夫している。義務教育の終わる16歳までは、子どもの通う公的機関に子どもの権利が尊重されているか確認する専門職が配置されているが、高校を退学したり就職して辞めたりするとケアが届かない若者が出てきてしまうので、このようにさまざまな方法で情報を届けようとしている。

地域の家

社会保障の家族部門の予算で運営されており、習いごと、イベント、週末のお出掛け企画、旅行などを実施する。学校から地域の家に子どもをつなぐことで、子どもがいつでも話しに行ける人がいて、子どもに合う活動を提案し、親子双方に関わることができるようになっている。
地域の家は、民間団体がニーズの多い場所に開設して運営することが多いので、移民や貧困層の多い地域に集中し、富裕層の多い地域には極端に少ないことが課題である。

QJ(Quartier Jeunes,若者地区)

パリ市の最近の工夫として若者地区という取り組みがある。16歳から30歳までどのような相談にも対応できる場所だ。これまで性のことは性的健康センター、心理的な相談はティーンエイジャーの家など専門分野ごとに機関があると説明してきたが、子どもや若者たちが、必ずしもそれぞれの機関に足を運ぶとは限らないため、若者支援のデパートのようにひとつの場所に集めることにより、それぞれの専門機関が若者の声をキャッチできるようにしている。自習やグループでの作業ができる場所が用意され、定期的に無料の映画上映や講演などのイベントを実施し、食料支援を受けられる場所もある。毎日さまざまな団体や機関の専門職がその場にいて若者に声を掛ける。分野は就職、職業訓練、専門学校、アートや音楽など文化活動を職業にする支援、健康、性、心理、依存症、法律相談、債務整理、住居問題、レジャー、スポーツ、旅行支援、食料支援と幅広い。性専門の心理士など扉を押すのに勇気がいる専門職も、専門職の方から若者にアプローチすることで気軽に利用できるよう工夫している。

ドアに貼られたポスター  低い精度で自動的に生成された説明
(パリ市ホームページより)

屋内, 写真, 部屋, キッチン が含まれている画像  自動的に生成された説明
左は筆者撮影の屋内の様子。
右はさまざまな公的・民間団体が出入りしていることを示す曜日別タイムテーブル。

警察未成年保護班

警察官が、未成年からの聴取や親子ソーシャルワーク、DVなどに対応するための特別な研修を経て専門のチームを構成している。筆者が活動を追ったチームはポニーテールの素敵な女性たちで、チーム内にソーシャルワーカーと心理士もいた。学校では、校内で被害を受けた子どもがいたら学校長から未成年保護班に連絡する義務があり、未成年保護班は子ども専門裁判所の検事の指揮のもとで動く。被害届は必要ないので、兄弟間の暴力や、子ども同士の暴力にもしっかり対応できる。日本では教育的配慮という理由から、学校に警察が入らないようにするという考え方があるが、フランスでは「子どもが話したら必ず守られる」ことを保障するために警察と連携している。
未成年保護班は、保護した未成年者が自ら帰宅を望まない限り、家には帰さない。子どもが家に帰りたくないときは何かしら問題があるとして対応する必要があり、家出を繰り返すリスクを避けるためである。家出は何もない状態で起きるわけではないので、親と子どもと話し合い、仲裁をして、関係を修復できるように助ける。未成年保護班は、警察としての業務よりも、仲裁、ソーシャルワーカーの仕事に時間をかけていることが多い。
また、子どもが家出した場合、通信会社の協力を得て即日携帯電話から子どもの居場所を特定できるようになっている。子どもの携帯電話の電源がオフになっていると現在地が分からないときがあるが、最後に電源がオンになっていた場所は特定できる。電話した相手の番号も調べられるので、電話した相手から子どもがどこにいるか教えてもらい迎えに行くこともある。連絡が途絶えたのが他都市の場合はその地域の警察に子どもを保護して連れて来てもらう。帰宅すると問題がありそうな場合や、売春につながっている可能性がある場合は検事に連絡して保護し、8日以内に調査を完了させる。女子の家出は売春あっ旋につながっている可能性があるので、まずは携帯電話の通信一覧をもとに捜査する。ここから売春あっ旋業者の逮捕につながることも多い。
売春や性被害があった場合は司法医療専門の婦人科医が診察する。診察を受けなかったり被害届を出さなかったりする場合でも、未成年保護班が裁判所に届け出る。未成年保護班は、裁判所が守ってくれるから被害について話していいこと、加害者から再度被害を受けることはないことを子どもに説明するなど、子どもを守るため、子ども専門裁判官と並んで重要な役割を果たしている。


フランスでも調子の悪い子どもはいる。それでもリカバリーの方法を制度として用意している。それが未成年人口10万人あたりの自殺率が日本の3分の1である理由のひとつではないだろうか。ユニセフが2020年に公表した「子どもたちに影響する世界」によると、子どもの精神的幸福度ランキングでフランスは上位4分の1に入っているのに対し、日本は最下位から2番目、さらに15歳の生活満足度において日本は最下位だった。フランスでウェルビーイングを感じる要因は「選択肢と自己決定」とされている。つまり、選ぶことができて、したいことに取り組める。そのためには、子どもの周りに話せる大人がいて、子どもが自分の望む通り人生を開花できるよう、大人が動けることが第一歩だろう。また、地域次第、出会い次第でセーフティネットからこぼれ落ちる子どもが出ないように、子どもの権利が確実に守られる枠組みも求め続ける必要がある。

詳しく読みたい方へ

路上エデュケーター:https://akikoawa.com/street-educator/
路上エデュケーターと地域連携:https://akikoawa.com/corona-disaster-and-welfare-in-france/
ネットエデュケーター:https://akikoawa.com/internet-educators/
シェルター:https://akikoawa.com/shelter-that-allows-you-to-run-away-safely-1/
シェルターの親への支援:https://akikoawa.com/shelter-that-allows-you-to-run-away-safely-2-parental-care/
教育格差と学びの保障:https://akikoawa.com/educational-inequity-in-france/
若者支援で利用できるツールはこちら:https://akikoawa.com/useful-links/

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著者
安發明子(あわ・あきこ)フランス子ども家庭福祉研究者
1981年鹿児島生まれ。2005年一橋大学社会学部卒、 首都圏で生活保護ワーカーとして働いた後2011年渡仏。2018年フランス国立社会科学高等研究院健康社会政策学修士、2019年フランス国立社会科学高等研究院社会学修士。フランスの子ども家庭福祉分野の調査をしながら日本へ発信を続けている。全ての子どもたちが幸せな子ども時代を過ごし、チャンスがある社会を目指して活動中。

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