WEB連載

フランスの親子まるごと支援

第4回

子どもにとっての関心実現のために「最初の1000日」-妊娠4か月から2歳まで②

もくじ

主に以下が妊娠4か月から2歳までの「最初の1000日」に関する考え方のポイントである。フランスではもともと妊娠中から積極的なケアがあったため、「最初の1000日」により支援が一層強化される形になった。

  • ●妊婦健診や出産は無料。匿名でも利用でき、全ての人が平等に利用できる公的健康(パブリックヘルス)として位置づけ。保険証がないときは産科のソーシャルワーカーなどが保険証をつくる手続きをする。  
  • ●妊娠届は最初に診察した医療機関からオンラインで保健センターや健康保険に共有される。保健センターは全ての内容をチェックし、ニーズがありそうな妊婦に連絡しサポートを開始する。妊娠中でも心配があれば児童保護分野の対象となる。  
  • ●妊娠初期面談を妊娠4か月までに行うことが医療機関に義務づけられている。産科病院には専属のソーシャルワーカーと心理士がいて、社会面と心理面で支援が必要ないか確認し、サポートする役割を担う。
  • ●保健センターによる全件チェックは妊娠届出時のほか、生後8日、半年、2歳の4回。病院や開業医などどこで健診を受けてもいいが、情報は保健センターに共有されチェックされる。産後の健診では子どもの心理面や行動面での確認も含まれる。
  • ●父親の産休取得可能日数が28日になり、一定以上とらないと雇用主に罰金が課せられる。
  • ●2か月半からの保育は、社会的心理的ニーズが高い子どもを優先し、親が働いてなくても利用できる。  
  • ●義務教育は3歳からだが、話しかけやアクティビティの提案など脳の発達を支える育て方が難しい家庭などには、2歳からの入学を勧める。

最もデリケートな「最初の1000日」
赤ちゃん「あと695日だけね!」(絵:パボ)

医療と福祉の連携における工夫

「最初の1000日」における妊娠中から産後までの各機関での流れは以下のようになる。

(『社会福祉学評論』2023年第24号p.8)

日本との違いは、妊娠を機会に産科病院のソーシャルワーカーが健康保険の手続きや住居探しを支援し、心理士が親子関係の葛藤や過去のトラウマのケアなどを支援する点がまず挙げられる。生まれてくる赤ちゃんの環境を整えるのである。日本のように妊婦が役所などに出向いて妊娠届を出さなくても、フランスでは医療機関からオンラインで各機関にデータが自動的に共有される仕組みがあるため、見落としを防ぐことができる。また、産後の家庭訪問も退院後48時間以内に行われると決まっていて、1回の訪問で1時間近くかけて親子の育児デビューを支える。さらに必要に応じて健康保険の範囲内で助産師が隔日で派遣されることも違いだ。開業助産師のリストを薬局でもらえるため、近所の助産師を産前から産後まで継続して頼ることができるようになっている。
フランスではこれらのサービスが申請制度ではないため、専門職がニーズに気づいてサービスを提案していく。また、親が相談するのを待っていては予防にならないため、専門職が全ての子どもの状況を把握し、ニーズに気づき、子どもの権利を守る役割を担っている。そのため、ニーズがあるのに福祉が届いていないことは問題となる。「親が希望しなかったからしょうがない」では子どもの権利は守れないからだ。
日本の申請制度では、緊急度が高くないと判断されたらサービスが利用できないことがあるが、フランスの場合は、予防することがリスク管理になり、結果的に低コストという認識が共有されているため、問題がなくても困っていなくても利用できるようにしている。

フランスと日本の枠組みを比較すると以下のようになる。

■妊娠中から3歳未満を対象とする予防の仕組み

パリ市の場合は同じ実務者が複数の機関を行き来する工夫をしている。同じ人が複数の機関で働くことで連携をとり情報、価値観や実践知の共有を可能にしている。例えば筆者の住む区の保健センターの助産師は週1回産科病院でも診察をしている。産科病院は地域のフォローが必要な妊婦の診察日を設けることで、その妊婦は産科病院で診察を担当した実務者に保健センターでも会うことになり、家庭訪問もスムーズに開始しやすい。産科病院は公的機関が大半であることも、保健センターとの連携を徹底しやすい背景となっている。
着目すべき点は、医療関係者たちが「母親の胎内から赤ちゃんがどのような経験をしているか?」「産後、赤ちゃんが過ごす環境はどのようなものか?」に関心を持ち妊娠中から積極的に準備をしようとしていることである。また、専門職は親に対しても出産前から気にかけて、知識を提供する機会を多く設けることで、信頼でき、相談できる相手として認識される努力をしている。

この図から分かるのは、親が相談をしなくても専門職が子どもの権利を守ろうとして動くこと、必要な福祉を専門職が届けていること、相談支援より具体的支援を行っていることである。
連携会議は月1度、産科病院で開催され、保健センターの医師、福祉事務所、児童相談所の専門職が集まる。会議では産科病院がフォローしている妊娠中と産後退院前の親子についてのサポート体制を話し合う。以下は産科病院から保健センターへの引き継ぎ表において、基本的な情報の他に書き込みスペースを十分用意されている項目である。専門職たちの重視している項目を知ることができる。

⬜︎ 母、父または子どもの健康
⬜︎ 心理的関係性
⬜︎ 親としての能力への支え
⬜︎ 児童保護分野(両親の過去も含む)
⬜︎ 家族の希望
⬜︎ 社会面の心配あり
⬜︎ 連携会議で話し合われたことのある家族

パリ市の保健センターの児童保護専門医への聞き取りによると、社会的養護に関わりがあった親、DVの可能性がある親、心配な気持ちが大きい母親、国の滞在許可がない場合、誰かの家に間借りしていたり、窓がなかったり、住居が適切でないなどの場合にはより注意し具体的な解決を手伝う。

幼少期に大事にされていること

保育の位置付けも日本とはやや異なる。保育を担うのが民間機関であったとしても、パリでは看護師が常駐、心理士と医師も週1回半日勤務するため、子どもの育ちを医療分野の専門職が常に見守っていることになる。さらに、保健センターによる抜き打ちチェックも児童保護専門医が行うため、子どもの成長をチェックできる。保育は親が働いていなくても利用でき、特に社会的ニーズの大きい家庭などは利用が勧められ、子どもの権利を確実にする役割を担っている。
フランスの保育園では、4種類の資格を中心とした多職種連携が求められている。国家資格である幼児エデュケーターは、資格の取得に1500時間の論理と2100時間の実習が求められ、子ども同士の社会性、親子の関係性などを支えるのが専門だ。ほかに、子どもの発達や関心に合ったアクティビティを提案するアニメーター、小児看護補助、そして幼少期専門資格が主な資格で、それぞれの専門職が自分たちの専門性を発揮して子どもの育ちを支える。さらに、管理職資格は、全国共通の管理職養成課程を経て取得できるもので、職員と利用者の権利を守る役割がある。管理職と他の専門職はヒエラルキーの上下関係ではなく、対等で役割が違うという位置づけである。それゆえ「園長の考え方次第で受けた研修内容が生かされない」などという事態は起こりにくく、それぞれが意見を言い、一緒に運営する関係性になっている。
さらにパリ市では、心理的ケアが必要なときは各区に心理医療センターがあり、保健センターや保育園から親子が紹介されて通う。児童精神科医と心理士が親子双方のケアをコーディネートする。例えば保育園で言葉の発達に心配があるとされると、まず親が心理医療センターで心理ケアを受け、その後子どもについても必要なケアが用意されていく。言語聴覚士や、認知・運動・心理の接続を担う精神運動訓練士などのケアも利用できる。親がケアを拒否したり子どもを関係機関に連れて行かない場合は、子ども専門裁判官がケアの利用を命令することもある。それにも従わないと、子どもの権利が危険にさらされているとして子どもは保護の対象となる。先天性ではない障害や発達に関するトラブルについては「個性×環境×心理(歴史)」とされており、環境による障害が起きないように専門職は注意を払っている。
「最初の1000日」と同じく子どもと関わる専門職の方針の土台になっているのは、2017年にフランス保健省から出された『子どもに必要なこと報告書』だ。保健センターの児童保護専門医をはじめ子どもと関わる専門職は、ここに示されている土台となる安全ニーズと、成長にとってのニーズが満たされているかを確認し、不足している部分へのサポートを行う。困ってから対応するスタンスではないことがよく分かる。

ダイアグラム  自動的に生成された説明


フランソワーズ・ムシー氏インタビュー

フランスのオセリアソーシャルワーカー養成校で幼児エデュケーターの養成を担うフランソワーズ・ムシー氏に話を伺った。 (聞き手:安發明子 2024.03.14)

安發: 幼児エデュケーターは親子に対する教育的な役割、子どもの社会性や人間関係について積極的な関わりをしていますね。

ムシ―:
幼少期に大事なことは、周りの大人が枠組みを設け、制限を設けること、例えばフラストレーションがある状況で怒るのではなく他の方法を教えることです。子どもが安全を感じるために、いつも同じルーティンがあることや制限を明確に定めることが大事です。これらは自分を取り巻く大人からの愛情を安全と感じるための基本的な土台になります。子どもは安心するので大きく成長していこうとします。枠組みがいつも同じであればうまくできるので自信が育ちます。
小児看護師の本の中にはそれぞれの年齢に応じて、愛情や、精神運動として何がニーズかが書かれています。言語も含めて、それぞれの要素について必要なことが書かれていて、子どもが自分自身の能力を最大限開花させるための環境や条件について学んでいます。
親が自由にしたいようにするのではなく、どのような教育が子どもの成長にとっていいかを親に伝えるのも幼児エデュケーターや小児看護師の役割です。子どもが親に合わせるのではなく、子どものニーズに合わせ親が子育ての主役になります。
子どもに関わる専門職は、子どもを中心に、子どものより良い成長のためにどうすることができるか、いい悪いの評価をせずに、親と話し合うことが求められています。時には、親としての義務があると明言することも幼児エデュケーターの役割です。

安發: 近年の変化はありますか?

ムシ―:
保健センターの心理士に相談に来る親は激増しています。子どもの怒りに対してどう接すればいいか分からないといった相談です。子どもが1歳半頃になってよく動くようになると、どう教育すればいいか分からず困っているという相談もあります。具体的には怒って床に自分の頭をたたきつける子どもがいたりするのです。親が適切な対応をとれないと、いずれ学校でも問題になります。家での枠組みが曖昧だと、学校でルールについて理解することができず、在宅教育支援の対象になります。これは貧困家庭だけの問題だと思わないでください、あらゆる階層の家庭の親が困って相談にやって来ます。寝るべき時間に寝ていない子ども、食べるべきものを食べない子ども、ほんの小さなときから、そのような形で根っこが育ってしまっているのです。1歳半になって「危ないからダメ」と言ってもやめないというのは、それまでに枠組みと制限を覚えさせられなかったことの延長で起きています。

安發:フランスでは赤ちゃんのときから朝まで寝ることを重視しますが、なぜですか?

ムシ―:
子どもは生後2か月半から保育園で社会生活を送るわけです。夜寝て日中は活動するという社会生活を送るのが規範になります。赤ちゃんや子どもには難しく強制されているように感じるかもしれません。遊びたいときに遊んで寝たいときに寝たいのに、決められるのが嫌なのです。しかし、それが先々成長に悪影響があることが分かっています。生活リズムが乱れていると保育園や学校で一番いいコンディションで取り組めなくなります。よく成長するためには夜は寝て、日中調子良く過ごすことです。脳科学的にも、よく寝ている方が効率的に学べると分かっています。

「このようにしてください」と押しつけるのではなく、一緒に取り組みながら家族ができる方法を見つけるのを支える。親子関係や子どもの教育で課題が大きいときは、在宅教育支援が勧められることが多い。在宅教育支援におけるエデュケーターの子どもとの具体的な関わりの様子は『ターラの夢見た家族生活 親子をまるごと支えるフランスの在宅教育支援』(著:パボ/訳:安發明子・サウザンブックス社)を参照いただきたい。

「本当は2歳だけど、1000日って言ってるんだ。オシャレだからね」(絵:パボ)

心理的社会的能力

フランスでは赤ちゃんの近くで世話をする大人たちが、言葉で赤ちゃんの安心感を支えることが重視されている。「アタッチメント(愛着)」という言葉が日本でも使われているが、フランスでも乳幼児期のキーワードである。専門職は妊娠中から親子の絆に注意を払い、産後はさらに親子のコミュニケーションに注目する。パリ市のポール・ロワイヤル産科病院では、親子の関係性を強化するフロアを用意しており、そのフロアには関係性に心配のある親子が集められ、多くの助産師が配置され親子のコミュニケーションを支えている。
親が愛情を持って赤ちゃんに接していても、赤ちゃんが親といるときに苦痛のサインを示すときは、例え親が赤ちゃんを養育することを希望していても赤ちゃんにとって危険があるとして、子ども専門裁判官が親子分離を決定し、親子別々にケアすることもある。赤ちゃんが専門職といるときの方が親といるときより調子が良い場合などである。赤ちゃんのサインは子どもの権利条約第3条の「子どもにとっての関心」を判断する際に十分考慮するという理由で重視される。もし、親子を一緒に家に帰してしまえば、赤ちゃんのニーズが優先されず赤ちゃんの健康に重大な悪影響を及ぼす可能性があるからだ。妊娠中に悩みを十分話せた母親の赤ちゃんは新生児期も調子がいいと言われていて、妊婦のケアをすることは赤ちゃんのケアをすることにもなるということである。「新生児と乳幼児 苦しみのサイン:いくつかのてがかり」は、前回もツールとして紹介したので活用してほしい。

●新生児と乳幼児 苦しみのサイン:いくつかのてがかり
https://akikoawa.com/wp-content/uploads/2024/02/sign-of-suffering-baby.pdf

赤ちゃんに説明をし、安心感を持って生きられるように支えることは、社会的心理的能力の教育の最初の一歩になる。心理的社会的能力は教育分野において学習と同じ重みを持って捉えられている。学校は心理的社会的能力を身につける場でもある。この概念はWHOが1994年に定義しており「個人が日常生活における出来事や乗り越えるべき課題に効率的に向き合うことができる能力。精神的ウェルビーイングを維持することができ、他者とのやりとりにおいて、その人の属する文化や環境の中で状況に適したポジティブな態度をとることができる能力」としている。そのために、生きていくにあたって土台となるさまざまな能力(ライフスキル)を学ぶ機会を用意すること。ライフスキルについてWHOは2003年に「自覚的に自ら決定をし、問題を解決し、批判的でクリエイティブな思考をし、効果的にコミュニケーションし、健康的な関係性を築け、他者と共感し合え、困難に立ち向かい、健康的で生産的な暮らしを送ることができる社会的心理的能力、関係性における能力」と定義している。
その後、定義は発展を遂げフランス国立公衆保健庁は「行動する力を強化し、精神的ウェルビーイングを維持し、建設的なやりとりを発展させることができる能力」と2021年に示している。
当初WHOが示していた能力は以下10点であり、2つずつ対になっている。

ダイアグラム  自動的に生成された説明

現在フランスで指標となっているものはWHOが示す指標がもととなっている。

アタッチメントとレジリエンスを育てる専門職

アタッチメントについて、前述した『ターラの夢見た家族生活』の著者であり、エデュケーターであるパボは2024年5月2日のエデュケーターの役割についての講座の中で、イギリスの精神分析家ジョン・ボウルビィが1950年代に掲げたアタッチメント理論から、「赤ちゃんが両親または他の近しい大人との、身体的心理的な親密さがあり、安心できる愛情を継続的に与えられれば、赤ちゃんはやがて安心して大人から離れ、外の世界に挑戦できるようになる。そのために、不安なときは大人から説明を受けることによって感情が調節できるようになること(花火の音に対して説明がされればもう花火は怖くなくなる)が重要である」と紹介している。
フランスの「最初の1000日」は脳精神科医であるボリス・シリュルニクによって主導されたが、シリュルニクは特にアタッチメントがその後の困難やトラウマを乗り越える個人の力に大きく影響するという観点を広めることに貢献した。ポジティブな関係性を経験することで、安全な愛着パターンを再構築でき、レジリエンス(回復力)が育つ。ポジティブな対人関係や社会的支援が、人が逆境を乗り越え、自らを築き直す上で中心的な役割を果たす。そのため、フランスでは意識的にリスクのある状況に置かれた子どもや逆境を経験した子どもに対して、在宅教育支援などの枠組みで「レジリエンスの後見人」としてエデュケーターをつけている。エデュケーターは子どもにポジティブな思考を伝え続け、自分の価値に子ども自身が気づくような機会を作り続ける。
ボリス・シリュルニクは講演の中で以下のように述べている。


家族の巣ではなく、エコシステムの巣をつくる、それは子どもにさまざまな栄養を与えてくれる安全な人々による環境。「子どもの周りに村を形成する」という考え方である。複数の安定した人たちが子どものまわりにいる、まわりに支えられる心理的教育的環境の中で育つことで、子どもは関係性や愛情の豊かさを身につけることができる。子どもは安心して豊かに育つことができる。親以外の愛着対象がいることで、精神が開かれ共感性が育つ。そうすることで絶対主義の人間をつくらない(筆者注:愛着対象が限られると、自分は絶対正しいと信じ反対意見を受けつけない大人に育つリスクがある)。
アタッチメントのトラブルを起こさないために、まずは子どもに関わる専門職と教職員が愛情によるケアを十分にできるための研修を受けることが必要。これら専門職が子どもの愛情不足をカバーすることができる。心理的社会的教育を十分に受けた子どもは安心してタフな人間に育つ。
子どもたちがそこに行けば確実に良い人間関係を築け、ポジティブで豊かな経験をできる場所を公的に用意すること。豊かな生き方を知って育つことができれば何かあったときでも壊れにくくなるのです。

(2024年3月28日CNAEMO講演)

人が人を支える方法を、地域次第、出会い次第にせず、公的サービスとして全国全ての子どもが利用できるようにする方法の一つがフランスの在宅教育支援である。在宅教育支援では1人のエデュケーターが26人の子ども、14家族程度を担当するので、月5時間は一人の子どもに時間がかけられる計算になっている。3人きょうだいの場合は15時間になる。一緒に食事をしたり、お出かけをしたり、さまざまな方法を使って親子とよく知り合って必要な支えができるようにしている。ニーズが多い場合はさらに時間数が増やされる。日本でも政策の方向性は同じであり、子ども家庭センター、児童家庭支援センターなどさまざまな形で親子まるごとの支援が強化されつつあるが、地域差が大きく、場所によっては十分人材を配置していないため、時間をかけて人が人を支えることができていない現状がある。

日本では親子支援をする機関においても赤ちゃんの泣き声を理解するアプリが紹介されていることがある。赤ちゃんのニーズは空腹や不快感など物理的なニーズのみならず、心理的なニーズも大きい。「どうしたのかな?」と赤ちゃんに聞き、関心を示すこと自体が心理的ニーズに応えることになる。アプリを使って親としてのタスクをこなせばいいわけではない。それは、親が「親をすること」について専門職に教えてもらい、赤ちゃんのことを知る努力をする、親としての能力を高めようと取り組むせっかくの機会を奪うことになる。親が自分が望む親になれるように支えられるのは専門職にこそできることだ。今こそ専門職は、親として子どもとの関わりを豊かで幸せなものにできますよ、赤ちゃんが「自分は親に理解されている」と感じて育つことができますよ、と自分たちにできることをPRするタイミングではないだろうか。


このテーマに関連した、フランスで使われているツール(日本語訳済み・無料)

安發明子公式サイトでPDF版を公開しています。ダウンロードしてお使いください。
https://akikoawa.com/useful-links/

参考リンク

●フランス「最初の1000日報告書-すべてがここから始まる」
 2020年9月 最初の1000日委員会による報告
 https://sante.gouv.fr/IMG/pdf/rapport-1000-premiers-jours.pdf

●フランス国立公衆保健庁作成
 Les compétences psychosociales (Santé publique France)
 https://akikoawa.com/wp-content/
 uploads/2024/08/Competences-psychosociales.pdf

ダイアグラム  自動的に生成された説明

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著者
安發明子(あわ・あきこ)フランス子ども家庭福祉研究者
1981年鹿児島生まれ。2005年一橋大学社会学部卒、首都圏で生活保護ワーカーとして働いた後2011年渡仏。2018年フランス国立社会科学高等研究院健康社会政策学修士、2019年フランス国立社会科学高等研究院社会学修士。フランスの子ども家庭福祉分野の調査をしながら日本へ発信を続けている。全ての子どもたちが幸せな子ども時代を過ごし、チャンスがある社会を目指して活動中。

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