WEB連載

帰ってきた「閑話ケア」……ときどき「講演旅行記」

第1回というわけでございまして… (通算 第106回)

今年の3月に「地域保健村」に激震が走った。ザッシ長屋が閉鎖されるというのだ。
閑話(むだばなし)好きの閑さんを含め、住民は、引っ越しを余儀なくされてしまった。田舎に帰る者もあれば、放浪の旅に出る者もいたが、歳を取った閑さんは、行き場所もなく、このまま村はずれで隠居しようかと、考えていた…。

おっと。いきなり、この文章が初めて―という方もいらっしゃるだろうから、一応説明しておこう。

雑誌媒体としての『地域保健』に、私は「保健師のための閑話ケア」と題する雑文を、2011年1月から連載していた。「閑話(かんわ)」というのは、無駄話、といった意味だが、ごくまれに役に立ちそうな事も書いてきたつもりではある。
保健師以外の周辺職種の方々にも読まれていたようだ。

当初は月刊誌。そして、この雑文をきっかけに、全国各地から講演に呼ばれるようになり、呼んで頂いた御礼も兼ねて、講演に伺った時の旅行記も書くようになった。

しかし、講演旅行が増える一方にもかかわらず、雑誌の方は途中から隔月刊になってしまった。
そうなると、年6回の連載のほとんどが旅行記になってしまいそうになり…。
で、旅行記だけが、2016年からこのweb版に独立したものとして誕生する事になった。

それについては「藤本さんの講演旅行記」の第1回に事情が書いてある。

ところが…。
今回、本体の雑誌そのものが休刊になってしまった。
なので、「閑話ケア」も、当然連載が終了する事になってしまったのである。

が、何故か、あっちこっちから「続きを書け!」と実際に言われ、「このまま逃げる気か!」という声が聞こえるような気にもなり、編集部からも、
「『閑話ケア』は、連載終了じゃないですよ。2023年3月号を見て下さい。終了する連載には『最終回』って書いてあるでしょ。『閑話ケア』には、そう書いてないじゃないですか!」
と、ムチャを言われるようになった。

というわけで、事の顛末を、冒頭の話の続きとして、私の好きな落語風に表現してみようか。

え~、毎度ばかばかしいお話ではございますが…。
急に隠居する事になった閑さん、村はずれでブラブラするだけの毎日でございまして。
いやあ、今までは誰彼かまわず捕まえて、無駄話を聞かせては楽しんでいたが、そうやってワイワイやっていた日が懐かしいなぁ、なんて、思うようになってきておりました。
ある日、ヒマに任せて、独り立ちしている息子の旅スケの所にフラっと現れまして、

「よう、せがれ。元気でやっとるかね」

「あれ、これはおとっつぁん。急に隠居したなんて聞きやしたが、どうなすったんで?」

「いやあ、いつも井戸端会議していたザッシ長屋が、急に立ち入り禁止になっちまってね。それじゃぁ仕方がねぇから、隠居しようかってわけだったんだが…。どうにもヒマでヒマで」

「そういうわけだったんですかい。いやあ、あたしもね、コロナがどうのこうのっていうので、すっかり出番が減っちまって。旅に出られなくなっちまった代わりに自転車に乗ってみたりしたんですが、そんな事ばかりもやってられなくて」

「世間の騒動はおさまってきているようだから、また出番があるんじゃねぇのか?」

「そりゃね、去年までよりは今年はようございます。山形や新潟なんて所からも早速お声がかかったりしましてね。でもね、あたしが独り立ちした頃に比べりゃ、それでも少なくて」

「でも、俺に比べりゃマシじゃねぇか。こちとら行き場が無くなっちまったんだもの」

「あ! おとっつぁん! いい事思いつきました。あたしがヒマな分、おとっつぁんがこっちの界隈に引っ越しておいでなさいよ。んでもって、こっちで遊んでみちゃあ如何でしょう?」

「え? 『うえぶ』とかいう所でか?」

「そうですよ。webですよ。ザッシ長屋に比べたら、そりゃ、おとっつぁんには居心地がよくねぇかもしれませんが、それでも、喋る所があるだけ、マシじゃぁございませんか。どうです? お喋り好きのおとっつぁん」

「なるほどな。おめぇがかまわねぇなら、そうさせてもらおうかね。『うえぶ』てぇのはよくわからねえが」

「なに、難しくはないですよ。ザッシ長屋じゃ縦書きだったのが、横書きになる程度の事で」

「タテがヨコ? じゃ、何かい、こっちじゃ立ったまま眠って、横になったまま歩くんかい?」

「いや…。相変わらずだなぁ、おとっつぁんは…」

「あと、気になるのは、『うえぶ』ってぇ名前だな」

「どう気になってるんで?」

「上に『ぶ』だろ。あんまりよろしくねぇやな」

「?」

「無愛想、とか不器用とかブッキラボウとか。上に『ぶ』がつくのはあんまり良くねえのが多いだろ」

「おとっつぁん、あたしはスッキリするもんだと思いますよ」

「どうして?」

「ぶっ飛んだり、ぶん投げたり、ぶっ飛ばしたりって考えたら、スッキリするでしょ」

まぁそんなわけで、こちらの世界に引っ越してくるという形で、皆さんの元に帰ってくる事になったわけだ。
雑誌の方が読みやすい? 
ま、でもね、webならスマホでも読めるから、職場で一冊購入して回し読みしていたなんていう方の場合には、こっちの方が便利ですよ。
「閑話ケア」から独立していた「講演旅行記」も、雑誌とwebみたいに分かれる必要が無くなったので、今までの分はそのまま残し、今後はこちらにまとめて行こうという事にもなった。
いつまで書く事になるのかなど、細かい事は、やってみないとわからないが。

というわけで、皆さま。あらためてよろしくお願い致します(^.^)(-.-)(__)

著者
藤本裕明(ふじもと・ひろあき)
分類学上は霊長目ヒト科の♂。立場上は一応、心理カウンセラーに属する。自分の所の他、埼玉県川越市の岸病院・さいたま市の小原クリニックなどで40年以上の臨床経験があるが、年数だけで蓄積はおそらく無い。
終わっちゃったと思ったら、まだ続く事になってしまった。イイカゲンに引っ込めという声が上がったらどうしよう……とも思ったが、ま、その時はその時。今年9月に前期高齢者になるので、ボケ防止のためにも書き続けようと思う。
どうぞ、皆様、お付き合いのほどを(*^―^)ノ♪
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