保健師のビタミン

みんな手段で悩んでいる!目的にかえって考えよう!!

第4話「住民(患者を含む)主役」とは?

今や「住民主役」は、保健・医療・福祉に限らず政治、産業、教育他全ての分野に共通するキーワードです。

それに呼応して窓口対応の改善を図る行政や「患者様」と呼ばせる病院も見かけますが、それが本来の住民主役へつながるのか大いに疑問です。

では 本来の住民主役とはどういうことでしょう?

考えてみてください!
健康づくりは行政や医療者が担うものでも、住民にさせるものでもありません。

私は「住民の真のニーズを明らかにし互いに共有し実現すること」だと考えています。そのためには住民や地域の治癒力・住民力等つまり「内なる力」を賦活化する主体的な取り組み(エンパワメント)が不可欠です。

例えば脳卒中であれば、医療者は疾病に着目し、動かなくなったところをどう回復させるか、といった問題点改善への取り組みへ患者を導いていく傾向がありますが、たとえ麻痺が生じても、当事者自身の心や人格は基本的には何も変わっていないことから、これから何をしたいか、QOL・価値観を最重視した支援が必要なのです。

患者さんは医療者側が想定する健康にさせられる必要はないのであって、あくまで自身が健康と感じるための支援を受ける権利があるのです。

生活習慣病は自業自得であり、予防できなかった責任は自らが負うのが適当であろうといった考え方や、住民を「保健・医療モデル」の範囲でみて、個々に「予防」を押し付けるような専門家主導の対応に終始するのはいかがでしょうか。

健康の義務化ともいえる昨今の健康施策に疑問を感じざるを得ません。

「健診のねらいは予防」を強調することを見直し、QOLの向上や価値観を重視した、健康と感じられる「生活モデル」としての支援の大切さを再確認する必要があると思います。

例えば、「血糖値を下げよう」ではなく、「ホノルルマラソンに行こう」へと、健診を活用する目標を、分かりやすく生活と密着した内容に変更していくことも効果的ではないでしょうか?

著者
櫃本真聿
愛媛大学医学部附属病院 医療福祉支援センター長
愛媛県各地の保健所長を経て平成14年8月に現職にいたる。
愛媛CATV番組審査員、FM愛媛(79.7Hz)「care of life」のパーソナリティも務める。
―著作―
・「ケースメソッドで学ぶ ヘルスプロモーションの政策開発-政策化・施策化のセンスと技術-」(株)ライフ・サイエンス・センター発行
・「ヘルスプロモーション時代の 自治体保健専門技術職員の効果的活用」行政発行

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