みんな手段で悩んでいる!目的にかえって考えよう!!
第5話ヘルスプロモーションを理解して
ヘルスプロモーションを直訳して「健康増進」としたことが、わが国の保健医療福祉施策にとって、大きな足踏みをさせることになったと考えています。
1986年にWHOがオタワで提唱したヘルスプロモーション理念は、「人々が自らの健康をコントロールし、改善できるようにするプロセスである」とされています。
ヘルスプロモーションが意味しているのは包括的な社会・政治的プロセスであり、それは単に、個人的スキルや能力の強化のためだけでなく、社会・環境・経済的環境を変化させるようなアクションを含んでいます。
住民主役を掲げた地方自治において、保健・医療・福祉・教育その他あらゆる分野で、この考え方は十分な判断基盤となるでしょう。
つまり地域が主体的に、住民(患者)と目的を共有するプロセスを重視しその実現に向かって環境整備を互いに協力して推し進めることが、ヘルスプロモーション理念の根幹であり、医療者が共有すべきものではないでしょうか。
従来からの「住民(患者)に良かれ」の取組みの多くは、結局は医療者側からの「押し付け」だと認識すべきです。支援への第一歩は、同じ方向を目指して共有する(FORの確認・共有)ことであり、そうすれば、それを実現するための協働が始まります。
住民(患者)の真のニーズを把握することは必ずしも容易ではないからこそ、専門家主導の良かれのサービスが先行してきたこれまでがあるのでしょう。これらのプロセスに手間をかけてこそ、地域自身での評価ができるのだと思います。
専門家主導の行動変容の限界を認識し、「健康にさせるための指導」から「健康と感じるための支援」へパラダイムシフトを図ることが大切です。
「住民・患者に良かれ」は、すでに押し付けであり支援ではありません。公衆衛生のEBM(科学的根拠)とは、地域特性や住民・患者ニーズに合致していることであり、住民・患者と医療技術職がFORを共有することです。
外からの力の限界を知り、住民も行政も専門機関もその他地域資源も、同じ方向を目指して(FORの確認・共有)、互いのそして地域の「内なる力」を引き出す、いわゆる「エンパワメント」こそが、ヘルスプロモーションの理念の根底にあるのです。
保健・医療モデルに留まることなく、生活モデルとしての観点を重視し、住民自身が主体的に地域資源を活用できるために、情報の収集・提供(公開)、受け皿のネットワーク化といった「環境整備」へ協働していく、まちづくりこそがヘルスプロモーションと言えるのです。