保健師のビタミン

園芸福祉で介護予防

第1話「園芸福祉」とは!?

「園芸福祉」。
最近結構耳にすることが多くなった言葉です。
この言葉がつくられてからまだ5年くらいしか経っていませんが、癒しブームや現代のストレス社会、環境問題などを背景に、全国に広がってきました。

園芸福祉の考え方をひと言でいうと「花や緑を育ててみんなで幸せになろう」ということです。
決して難しいものではありません。
シンプルに、“人と人の間に植物が入っている”というのが園芸福祉の基本の形です。

「みんなでやる」という思想が基本となってはいますが、1対1+植物でも園芸福祉活動は充分成立します。
以前私が大阪で、ボランティア向けの園芸福祉講座の講師を努めたときのことです。参加者から参加の目的を聞いていると、こんな答えが返ってきました。
60代ぐらいの男性がおっしゃった言葉。
「今回園芸福祉を勉強して、病気で家に寝たきり状態の妻と二人、ベランダで土いじりをしてみたいから。」
1対1。
大事に思う相手のためだけに園芸をする。
これも立派な園芸福祉活動なのです。

自分がいて、特別に思う誰かがいて、その間に植物が入ることで関係が豊かになる。このご夫婦がやろうとしていることが、園芸福祉の原点ではないかと思いました。

園芸福祉活動は多くの可能性を秘めています。
園芸を医療・福祉の現場やコミュニティづくりで活用する良さは、植物が人と人の間に入ることでコミュニケーションがスムーズになり、人間同士の関係、そして共有する時間が豊かになることです。

現在では、社会の多様なニーズを受けて、以下のようなさまざまな目的や場面で活用され、実践されています。


出典:「園芸福祉入門」

こんな園芸福祉活動の魅力を、高齢者の介護予防の立場にいる私の視点から、皆様にご紹介させていただきたいと思います。
これから10回お付き合いください。

著者
石神洋一
特定非営利活動法人たかつき 主催
NPO法人日本園芸福祉普及協会理事、日本園芸療法協議会理事など
著書に「福祉のための農園芸活動―無理せずできる実践マニュアル」(農文協)がある。

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