園芸福祉で介護予防
第3話園芸福祉の目的は“しあわせ”
「園芸福祉」という言葉がつくられたのは、約5年前。それまでは、福祉現場や医療現場で植物を活用する活動を表す言葉は「園芸療法」でした。
「園芸療法」というのは、読んで字の如く、“治療の方法として園芸を使う”という意味です。園芸療法の目的は治療にあります。
「園芸福祉」はどうでしょう。
福祉の「福」と「祉」という漢字はどちらも「しあわせ」という意味です。園芸福祉の目的は“しあわせ”にあるのです。
ことばの力というのはなんともすごいもの。「園芸福祉」ということばができてから、このような活動に興味・関心をもち、かかわりを持とうとする方が飛躍的に増えました。「園芸療法」ということばではなにかハードルが高い感じがしていたのかもしれません。
今では、園芸療法は「園芸福祉」のバリエーションのひとつと考えられています。どちらが良い、悪いということではありません。
園芸というのは、「やりたい」「楽しい」と思って参加してこそ、本来の効果が得られます。大切なことは、園芸という本来楽しむべき活動をせっかくするのだから、楽しくやらないともったいないということです。
農園芸活動を身体の機能回復や介護予防に役立てるときの流れは、下のような順番です。
①「楽しそう、やりたい」と心が動く
②身体が動く
③心と身体が元気になっていた(結果的に)
ここで、③を得ようとして②に焦点を合わせてしまうと、楽しくなくなり、まず長続きしません。①に焦点を合わせることがポイントです。
長年農園芸活動をやってきているベテランの園芸療法士さんたちは、みんなこの順番を守っています。
「何をしたほうが良いか」よりもまず、「相手が何をしたいのか」に焦点を当てます。そこから活動を組み立てていくのです。
もちろん、頭の中では利用者さんの抱える問題の把握も必要です。その問題点への解決になる活動も、利用者さんのやりたい方向を見ながら一緒に考えていくことが重要です。
園芸福祉にしても、園芸療法にしても、まずは対象となる方とたくさんコミュニケーションをとること。
そこから満足いく活動が生まれてきます。
「心が動いて身体が動く」
この順番を間違えないようにしたいものです。