保健師のビタミン

園芸福祉で介護予防

第10話「なぜ園芸福祉を続けるか?」その理由と展望

これまで、園芸福祉活動実践の事例や効果、魅力などを紹介してきました。園芸福祉は、近年では言葉も認知度が高まり、様々な地域で年齢性別を問わず楽しめる活動としてその輪が広がってきています。

園芸福祉にかかわりはじめてまだ6年ちょっとですが、園芸と福祉を結びつけることで、他では得られない貴重な経験を積ませてもらってきました。園芸だけ、もしくは福祉だけをやっていたのでは得られないことがたくさんあったと思います。文章を書かせていただいたり、本を書いたり、講演をしたり、新聞やラジオに出たり。

また、たくさんの人たちが見学に来てくださるようにもなりました。施設見学に来られたり、講演を聞いたり、本を読んだりした人たちから「これだけやったら大変でしょう。なぜ園芸福祉をやり続けているのですか?」という質問をよく受けます。最近特に、私たちの活動を文章で表す機会が増えたこともあり、なぜやり続けているのかを整理して考えることができました。

「なぜ続けているんだろう?」と考えたときに、いろいろな要素は考えられますが、現段階で思うことは「園芸福祉は生命を育て、未来に期待する活動であるから」ということです。

この生命とのかかわりというのが園芸福祉のもっとも意義深いところだと思っています。種をまいた瞬間から生命の重みを感じ、その生命に対する責任が生じます。そして自分が生きていること、存在していることそのものに価値を感じるようになるのです。同時に、植物が大きくなったときの未来のことを考えます。それも明るい未来です。それは花咲く美しい未来であったり、美味しいすばらしい未来であったりします。生命とのかかわりの中で、明るい未来を期待することができる、手軽で意義深い活動は、他にはなかなかありません。

高齢者福祉サービスを提供する中で、利用者さんの人生終盤の貴重な時間の過ごし方として、園芸福祉はピッタリだとわたしたちは思っています。来月12月からオープン予定の「デイサービスセンター晴耕雨読舎」でも、園芸福祉活動をより多く活用した介護施設を作ります。もう少しでスタートできるので、今からとても楽しみです。

そして、今後はこの素晴らしい園芸福祉活動を、より多くの高齢者施設や、病気に苦しむ方々のいる場所、子ども達の教育の舞台として活用していくよう働きかけていきたいと思っています。

私たちにとって農園芸のない福祉は考えられません。この魅力ある活動を、意義あるものとして世の中に認めてもらい、広げていくことが私たちの使命のひとつであると考えています。そして、それは必ず広がっていくと信じています。

NPOたかつきでは、講演や研修なども行っています。また、初級園芸福祉士養成講座(H19.9月8日、9日、29日、30日)を開催いたします。ぜひご参加いただき、園芸福祉の魅力を実感していただきたいと思っております。
http://koala.npo-takatsuki.org/engeihukusi.html
長い間お付き合いくださいましてありがとうございました。

著者
石神洋一
特定非営利活動法人たかつき 主催
NPO法人日本園芸福祉普及協会理事、日本園芸療法協議会理事など
著書に「福祉のための農園芸活動―無理せずできる実践マニュアル」(農文協)がある。

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