保健師のビタミン

映画にみる(発達)障害

第1話自閉症と家族のドラマ

『マラソン(韓国)』
出演:チョ・スンウ、キム・ミスク、ペク・ソンヒョン、イ・ギヨン、アン・ネサン

公開当時、日本でも話題になった映画ですね。最近“嵐”の二宮君主演でのリメイクがテレビドラマで放映されていたように思います。実話(走れ、ヒョンジュン!:ランダムハウス講談社)に基づいた映画ということですが、制作者は自閉症とその家族のことを、相当に勉強したんじゃないかと思います。

大きすぎるが故に盲目的になってしまう母親の愛情、それを側で見つめるしかない父親の苦悩、兄の障害故に孤独を感じて非行に走る弟…「主人公の演技」ということだけではなく、家族やそれをとりまく人間模様がうまくそして繊細に描かれているように思いました。

そして、この映画をみていて私は自分が地域援助の職にあったときに関わった家族のことを思いだしました。ある障害をかかえたお子さんに対して親御さんは少しでも可能性を伸ばそうと一生懸命スポーツをさせました。

子どもも親の期待に応えようとしたのでしょうか、スポーツ大会などで優勝するほどになりましたが、その一方で大変な家庭内暴力を長期にわたりおこしました。ご家族は本当に疲弊されていました。そして、その子も疲弊していたのでしょう。

お母さんは「本当にこれでいいんだろうか・・・」と涙ながらに苦悶されていました。私はそのようなご家族の前では、専門家でも援助者でもなく、ただ一人の人間として共にその苦悩や疲弊を味わうことしかできませんでした。でも、そのような存在であり続けることも精神保健に関わるものの大切な仕事なのかもしれません。

著者
伊藤 匡
東京大学21世紀COE「心とことば- 進化認知科学的展開」特任研究員
1971年兵庫県生まれ。臨床心理士。日本では数少ないサバン症候群の研究を行う傍ら、精神科クリニック・スクールカウンセラーなどを現場として主に児童・思春期の精神保健に携わる

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