保健師のビタミン

コミュニティをつくる

第2話必要とされる人になる

活き粋あさむしのいきいき農園は、緑が目立つようになって自然のエネルギーを感じる時期になりました。

いきいき農園は22歳の櫻庭巧大くんが農場長としてがんばっています。今年3年目でかなり気合が入っています。この農園で収穫した野菜をコミュニティレストラン「浅めし食堂」で使っています。

いきいき農園に昨年から一人、作業を一緒にやってくれる人が増えました。彼は地元のSくん、30歳代男性です。Sくんは知的ハンディキャップがあり、仕事に就くことが難しくて、生活保護を受けて暮らし、糖尿病もコントロールできず、ぶらぶらしていました。

クリニックに血液検査に来た時に、活き粋あさむしの理事長でもある院長から「農園の仕事をやってみないか、このままでは糖尿病も悪化するし、何しろ君はまだ若い、このまま何もしないでぶらぶらして年をとっていいの?」と言われ、即やりたいということになりました。

家族と市役所の担当者とを調整して農園で働いて給料をもらうことになりました。その分保護費が減るのですが、Sくんは働くことを選びました。

Sくんは数ヶ月で体が引き締まり、なんと血糖のコントロールも良好になりました。彼に言わせると、彼は櫻庭農場長を先生だと思っていて、農業の修行をしているところなのだそうです。将来は農業をちゃんとできるようになりたいと思っているのです。

彼はいきいき農園に体験学習に来る子どもたちや、職場体験に来る生徒に楽しそうに教えてくれるようになっていきました。

活き粋あさむしの活動があったからこそ、Sくんは自分に誇りを持つことができたと言っても過言ではないです。自分が楽しく仕事ができるようになって、その仕事が人の役に立ち、地域の人たちから声をかけられるようになっていくプロセスを見てきました。

頼んだことを確実にやってくれる彼は仲間から必要とされる人になりました。
私もこんな風に仕事したいなぁと、切に思います。

著者
三上公子
NPO法人活き粋あさむし 事務局長、(株)ヘルスプロモーション青森 代表取締役、医療法人蛍慈会理事、コミュニティ・レストランネットワーク運営委員、保健師、看護学修士
保健師らしい仕事をしたいがために行政の保健師を退職し、フリーの立場でヘルシーコミュニティ形成に奮闘中。
ヘルスプロモーションの活動において、地域住民の立場でコミュニティのしくみを探り、住みよい地域をつくろうと思って活動をしています。

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