保健師のビタミン

コミュニティをつくる

第5話ヘルシーコミュニティへようこそ

これまで特定健診、特定保健指導が始まることを念頭におきながら、平成16年からヘルシーツアーを実施し、初期のころは3泊4日の健康ダイエットツアー、昨年度はメタボ改善ツアーという名称で滞在型の健康づくりを提供してきました。

地域の資源を活用して健康づくりを行う健康滞在を構築しようと、温泉入浴、里山トレッキング、海岸線のノルディックウォーキング、浅めし食堂での食事、クリニックでの健康チェックなどのプログラムと、各種保健指導をする内容でした。食事は1日1600キロカロリー、運動量は300キロカロリーの生活を楽しみながら体験していただきました。

4年にわたり試行錯誤をしてきて、滞在の前後で各種検査値を比較し、血圧、動脈硬化、血糖、血中脂質が有意に減少してプログラムの評価は得られましたが、何だかぴんとこないのですよね。

私が主宰してプログラムを作ってきたわけですが、昨年あたりから参加者の様子を見て、なんだかおかしいと気がつき始めたのです。提供したプログラムにそって運動や食事を食べているわけですが、しんどいとか、お腹がすいたとか、これを毎日やるのは大変だとかネガティブな声を聞くことが多かったのです。

当の私もみなさんにお付き合いして、運動をこなし、保健指導も行い、現場のスタッフの調整をして疲れてしまい、だんだんしんどくなっていました。

特定保健指導を実際にスタートするためにも現場でやってみなければと、先行してやってきたのですが、特定保健指導はもちろんですが、健康づくりに関して、うわべだけの決められた指導をしていればいいというものではないですよね。

保健指導というと、苦しいというイメージがあり嫌われますよね。生活習慣に関する指導はどんな大儀名分があろうとも苦しければダメなんです。「気持ちいい」がなければいけないのです。

そして、やはり基本ですが対象者の人生のQOLを高めるための生活習慣でなければ、健康の意味をはなから無視したことになってしまいます。

本来の自分自身の心とからだが「気持ちいい」と感じることを体験したら、無理なく毎日、当たり前のように生活の一部になることでしょう。その本来の自分に気づくことが非常に重要だと最近思っています。

ひとりひとりと向き合い、もっとメンタルな部分を大切にしなければと思います。自然の中でリフレッシュしたからといって、心とからだが「気持ちいい」と感じるとは限らないのです。

マニュアルにしばられた4年を経て、今年からは自然と一体となり、森や畑、地域の人からパワーをもらい、ちゃんとした地物のおいしい料理を食べる健康滞在「森と大地の健康塾」をスタートすることになりました。

地域づくりの成果によって、より多くの仲間と一緒にプログラムを提供できるようになりました。鍼灸やパーソナルトレーニング、畑の体験も選べるようにしました。

早起きや、地元の安全で新鮮なおいしいものを食べる当たり前の生活は、私自身も楽しいし、気持ちいい生活習慣です。自分でもできないことを人に指導するのはやっぱりよくないし、よい結果を生むことにはなりません。

指導する立場の人がまず、自分の心とからだを取り戻さないと真実味がありませんよ。指導者こそです。

今、この仕事に「わくわく」しているのです。楽しくてしょうがないですよ!と言って仕事したいです。

著者
三上公子
NPO法人活き粋あさむし 事務局長、(株)ヘルスプロモーション青森 代表取締役、医療法人蛍慈会理事、コミュニティ・レストランネットワーク運営委員、保健師、看護学修士
保健師らしい仕事をしたいがために行政の保健師を退職し、フリーの立場でヘルシーコミュニティ形成に奮闘中。
ヘルスプロモーションの活動において、地域住民の立場でコミュニティのしくみを探り、住みよい地域をつくろうと思って活動をしています。

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