事例に学ぶ保健指導
第1話困難事例は存在しない!?
メタボリックシンドロームの所見を有する住民との健康相談はかなり苦戦を強いられると思います。なぜなら、選定に本人の意思が反映されていないからです。
住民の健康づくりを一生懸命実践してきた地域ほど、行動に移しにくい人が対象になる可能性が高くなります。なぜなら、行動できる人たちは今までの保健師さんのかかわりの中で変わっているからです。
この対象に残った人は、今までの変わるチャンスをすり抜けてきたつわものか、たまたまチャンスを逃してしまった人だからです。
対応しておられる保健師さんから「ちゃんと指導をしているのに、なかなか住民が行動変容をしてくれない困難事例にどう関わったらいいのですか」という質問を受けます。
ひとつ私から質問があります。
「困難と言うのは、誰にとって何が困難なのでしょうか?」と。
多くの困難事例は、保健師さんの思うようにいかないケースで、本人は何も困難とは思っていないではないでしょうか。教育現場でいうと、先生の言うことを聞かない子どもを「問題児である」と言っているようなものです。
保健師の持っている枠に入らない人を困難事例と決めていることはありませんか。
本当の困難事例は、本人が行動したい、変えたいのに無意識に不健康であることを望んで反対の行動をしてしまう、本人が困難を感じているケースのことです。
この場合、不健康であるメリット、自分の体を害することで何か別のものを得ようとしている可能性があります。
住民がそこまで気づき、自分を大切にしたい、自分を労われるよう、保健師としてかかわりたいと願っています。