保健師のビタミン

事例に学ぶ保健指導

第6話「板挟みになった!」という前に…

「Aさんは糖尿病があるのですが、通院するわけでもなく、体を気遣う様子もありません。Aさんの奥さん(Bさん)から、『Aさんの体が心配なので、病院に行くように、保健師さんからも言ってくださいよ』と頼まれます。奥さんの気持ちをAさんに伝えても、Aさんは一向に病院に行きません。二人の間に挟まって、どう支援したらいいのでしょう?」

まず、それぞれの言い分を聞いて調整するより、両者の意見をそれぞれがいる前で聞く、3者面談を行います。この場合、保健師はどちらの見方にもなりません。保健師は、ついつい健康行動をとらせようとする人の味方になりがちですが、そうすると、一方の見方、一方の敵になりがちです。二人から健康行動をとらせようとされたり、取らないことを責められるのでは、聞く耳は持てません。こころを開いて本音など、到底、話せるものではありません。

保健師はどちらの見方にもならず、ニュートラルな仲介者になることが肝心です。Aさんが話すときには、Aさんの立場に立ち保健師は聞きます。同じく、Bさんの言い分もBさんの立場に立って保健師は聞きます。この状況を作り出すことで、AさんとBさんは、間接的に相手の思いを聞くことになります。

その上で、ふたりの共通の目的、目標を探していきます。行動を取る取らないでは一致できなくても、長生きして欲しい、一緒に旅行を楽しみたいなど、共通の目標が見つかれば、あとはそんなにむずかしくはありません。そのために互いにできること、一緒にできることを探します。

どちらかが我慢をするのではなく、お互いの妥協点を見つけだせるように両者の話を聞いてゆきます。答えは二人が出してゆけます。

この場合も保健師が正しい行動は、どちらが正しいかを決めて関わろうとするから、板挟みになったり、答えを見いだせなくなってしまうのです。保健師にはニュートラルであることが、何より大切です。

著者
村田陽子
(有) ビーイングサポート・マナ 代表取締役、NPO法人まなネット 理事長
自衛隊中央病院高等看護学院、北海道立衛生学院保健婦学科卒業後、自衛隊札幌病院で透析室看護師となる。朝日新聞健康管理室、HOYA健康管理室などで健康相談、健康教育業務に携わり、1990年よりフリーの保健師、健康教育コンサルタントとしてセミナーを実施。95年ビーイングサポート・マナを設立。01年NPOマナネット設立。

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