事例に学ぶ保健指導
第9話特定保健指導の目標は?
保健事業(保健指導)の目標設定をどのように考えておられますか。厚生労働省は新規治療者を○○%に減らす、「積極的支援」への移行者を△△%以下にするなど、具体的な数値目標を立てるように促しています。
あなたの市町村、健保、あなた自身は、どんな目標を考えていますか。もしかしたら、保健指導した人全員の体重を減らそうとしていませんか。実際に、ヘルスアップ事業として住民に関わるとき、その対象者の集め方にもよるのですが、体重だけの問題ではないケース、特にうつ傾向であったり、不安が強かったり、メンタル面での問題を抱えた人たちに多く出会います。
特定保健指導を見越したヘルスアップ事業に関わる、うちのスタッフからの報告からも、本人の問題は体重以前のことにあるという人がいます。
わたしは特定保健指導のアウトソーシング先として事業を受ける際、担当スタッフに、「全員を体重を落とす、100%ではなく50%でいい」と伝えています。100人の中には行動変容を起こさない人がいるはずです。それを何とかやせさせようと思うから、強引に行動させようと関係を壊したり、プレッシャーを感じて良い関わりがもてなくなることがあります。
半分で良いと思うことで、スタッフは肩の力を向いて、良い指導ができます。また、メタポリックシンドローム以外の本当の問題を聞きだす余裕も生まれてきているように感じます。
さらに、体重に変化の見られなかった人の半分、すなわち全体の25%は、行動すること、変えてみること、取り組んでみることの面白さを体験してもらえればよい、残りの25%は保健師・管理栄養士と話すのも良いものだな、機会があったらまた話をしてみようかなと思ってもらえれば良いと思っています。
良い関係を築いておけば、この事業が終わったときにでも、また保健指導を受けよう、自分の体のことを話してもいいんだと次につながります。
半年で成果を出すこと以上に、事業が終わった後の住民とのかかわりや、その後の行動に影響があることが大事だと考えています。