「保健師のための閑話ケア」web版【番外編】
自転車日記 2
2021-12-17
2019年6月29日、「自転車日記」というのを書いたが、今日はその続編。
講演旅行がここ2年、まったくない。講演そのものの依頼がコロナ禍で激減、2019年11月の茨城県結城市以後は、地元と都内で数回あっただけ。これでは旅行記にならない。
だから、残念な事に本欄が活かされないでいる。
そこで、また自転車の話でも書こうという次第。
みなさんもご一緒に、プチ旅行気分を味わって頂ければ幸いである。
特に、いろいろ解禁になったとはいえ、保健行政にかかわる皆さんは、次に備えて気が気ではない日々かも知れない。ちょっとだけでも私とご一緒に、気分転換に出掛けましょう!
還暦(60歳)の誕生日を過ぎてから乗り出したクロスバイク(スポーツタイプの自転車の一種)、3年経った今も快調だ。
その後も西新井大師に行ってみたり深大寺に行ってみたり、相変わらずマイペースで楽しんでいるが、せっかくだから直近のこの秋の景色を紹介しよう。
今回は意図したわけではないが、たまたま、3つの「湖」である。
湖と言ったって、琵琶湖とか諏訪湖とか十和田湖のような、そんな素敵な場所は、私の住む地域(埼玉県志木市)の周辺にはない。自転車で訪ねられる所に琵琶湖があったら嬉しいが、関東には私の知る限りでは、「湖」と言っても人工的なダム、貯水池などの方が多い気がする。琵琶湖の次に大きな茨城の霞ケ浦、日光の中禅寺湖のような名所もあるにはあるが。あいにく、遠い。
今回紹介するのは、まずは我が家から片道5km程度の所にある「彩湖(さいこ)」。今年の11月18日木曜日の景色である。
この看板に書かれているように、水がめ、つまり飲料水の元としての水でもあるが、同時に、荒川があふれそうな時に水量を調節する「治水」のための場所でもある。
なので、この彩湖に加えて、その上流部の公園部分全体を「荒川第一調節池」と呼ぶ。自治体で言えば、さいたま市と戸田市(ごく一部、朝霞市も含まれるようだ)に属する地域だ。
この案内板だと、右側がほぼ北。湖部分の上に荒川が右から左に流れている。右上の切れている先まで含めて調節池という事だが、2年前の台風19号では、普段、公園になっている部分が完全に水没し、見事に調節池の役割を果たしてくれた。これが無かったら、我が家周辺のみならず、下流の都内も大水害になっていたかもしれない。
案内板の左をアップにしたのがこれ。橋は「幸魂大橋(さきたまおおはし)」と言う。東京外環自動車道の和光北インターチェンジが橋の左上、戸田西インターが右下になる。ちなみに我が家は案内板の真上の方向にあり、幸魂大橋よりも上流の秋ヶ瀬橋を渡る方がはるかに近いのだが、この日、野暮用を済ませてから向かったので、この橋を渡る事になってしまった。
いやいや、大変だった。長い長い上り坂を登り切って彩湖の真上でひと休み。
下に見えるのは案内板にある「立ち入り禁止(自然保全ゾーン)」である。 渡り切って橋の下をくぐり、まずは案内板の中の9番、「彩湖自然学習センター」に立ち寄る。
中に入って、すぐ右の部屋。
何かと思ったら、荒川水系の魚の展示だった。
フロアによって、鳥や動物や昆虫の、はく製や標本などが展示されている。
が、ちょっと手入れが…。残念。
最上階は展望スペースになっていて、先ほどの橋はこんな感じ。
案内板の右の方は、こんな様子である。
天気が良ければ富士山も見えるはずだが、この日はあいにくの曇天だった。
湖畔に戻る。先の案内板の2番の橋から湖の右端までは周回コースになっていて、一周約5kmを自転車乗りやランナーが走っている。休日はなかなかの人出で、公園部分にはバーベキューエリアや野球場、サッカー場、釣り堀など様々な屋外施設があり、コロナの緊張が解けた14日の日曜は、かなり賑やかだった。
実は4日前の14日に一度来たのだが、人が多過ぎて撮影もしにくくて、たまたま休みだった木曜にまた来たという次第(;^_^A
案内板の下側中央辺りから右上方向を眺めたところ。このままずっと湖畔を行くと、JR武蔵野線沿いに出る。
この先の左側に最初の写真の彩湖を示す大きな文字看板がある。
そこを通り過ぎてまたぐるりと回って来たら、面白い光景。
ラジコンのヨットのレースをしていた。
紅葉は、せいぜいこんな感じ。何の木だろう? エノキのような気がするが、植物には詳しくない。
他に秋らしい所はないかなと思って走っていたら、ナント、シマウマやゾウが!
一瞬ギョッとしたが、遊具だった。
湖畔はさざ波。曇天だから暗め。水鳥がいたり、時にカメが顔を出していたりしたが、撮影はできなかった。
こんな風に東屋もあって休憩できる。遠くに見えるのが、私が最初に渡った大橋。
子供連れが遊ぶ所も沢山あって、俗称「カマキリ公園」と言われるエリアが、ここ。
この日は最初の遠回りも含め、32kmの走行距離。不思議なもので、最初は自転車で何十キロなんて、考えられなかったのが、今では30kmを超えて、やっと乗ったなって気がする。
告白するが、以前は100m先にも車で行っていたような人間だ。勤務先の病院の昼休み、病院から100m足らずの郵便局に車で行ってたら、看護師さんに見つかり、
「先生、こんなとこまでわざわざ車で来たの?」
と呆れられたので、
「いや、この先のコンビニに行く途中だよ」
と言い訳をしたのだが、そのコンビニはそこから50mくらいで…。
そんな調子だったのだから、自分自身の感覚の変化に、正直戸惑っている。
以前は歩くのはせいぜい1km前後まで、自転車は2~3kmで、どんなに遠くても5kmが限界といった感じだったと思う。ところが今は5kmくらいまでが歩く距離で、自転車は50~60kmまでかな、70kmはちょっとまだキツイだろうな―という風に思ってしまうのだ。
歳とってボケてきて、感覚がおかしくなってきているだけなのかもしれない…。
11月28日の日曜日。次は「多摩湖(たまこ)」を目指す。字で想像できる通り、多摩川に関係がある。多摩川の水を貯める所で、本名は「村山貯水池」と言う。
埼玉との都県境には、東京都側の多摩湖と、埼玉県側に位置する「狭山湖(さやまこ)」が並んである。こっちは本名「山口貯水池」。先にできたのは多摩湖らしい。
多摩湖は東京都で、狭山湖は埼玉県だが、どっちも都民のための水がめであって、埼玉県民は利用していないらしい。都県にまたがる「狭山丘陵」という一帯にある。
多摩湖は「狭山公園」に隣接しているが、これは都立の公園。しかし埼玉には「狭山市」があり、「狭山茶」と言えば埼玉の特産物のひとつ。しかし、上述のように「狭山丘陵」という地域には都の一部も含まれる。なので、都内地域でとれる狭山茶は「東京狭山茶」と呼ぶ事もあるらしい。何ともややっこしいが、行政が勝手に線引きした結果の事であって、よくある話とも言える。
多摩湖に行こうと思ったのは、知人の自転車乗りから良い所だったと聞いたので。
自宅から素直に向かうと20km程度だが、色々調べているうちに、JR中央線の武蔵境(むさしさかい)駅に近い辺りから、多摩湖まで、ほぼ10km直線の「多摩湖自転車歩行者道」というのが走っている事を見つけた。
かなりの遠回りで、その道を通ろうとすると、多摩湖までの距離は1.5倍の30kmくらいになるのだが、10kmも続く直線道路が都内にあるなんて、奇跡ではないか。しかも自転車と歩行者専用の道だから、車で行くわけにもいかず、絶好の機会。
行きは30kmでも帰りは20kmで済む。30+20=50km。ほら、自転車の距離だ。
と、言うわけで、少し風はあるものの、彩湖を訪れた時よりははるかに好天で、紅葉も進んでいる事を期待して、出発。
一時間半ほどのんびり走って、「多摩湖自転車歩行者道」の起点に到着。後ろに見える道は五日市街道。「関前五丁目」という交差点の近くだ。
ここから矢印方向に、10kmの直線が続くというわけだ。
ゆっくり走り出す。自転車も多いが、いわゆるサイクリストと呼ばれる自転車乗りの人より、ママチャリや子供の自転車の方が多い。更に、歩行者も多いし、ところどころにバイクや車の侵入除けの柵もあるから、そもそもスピードを出して走る場所ではないようだ。のんびり走る私にはちょうど良い。
紅葉も、きれい。
少しのカーブや部分的にかくっと曲がる所もあるが、見事にまっすぐだ。
その秘密は、多摩湖との関係にある。多摩湖の水は都民の飲用水。今も残る玉川上水は、江戸時代に作られたものだが、その現代版の太い水道管が、この道路の下を通っているのだ。水道管は、グニャグニャ曲げるより、まっすぐの方が良いでしょ。その、水道管の上に作った道路―という事なのである。ちなみに、こういう道の事を「水道道路」と呼ぶ。
水道管の終点が、この道路の起点のすぐ近くの「境浄水場」。ここで処理された水が、多分、都内各地に送られて行くのであろう。大したものだ。
道の左右には、大小さまざまな公園があるようだが、起点から4km少しの右側に、こんな場所を見つけた。
小平ふるさと村。解体保管していた古民家を復元したエリア。左側は旧小平郵便局だと。村の中に入ると家屋や水車小屋など、昔の匂いがする一画。
こんな風に寄り道を楽しむのが私のスタイル。ストイックなサイクリストとは一線を画している。そんな私には向いている、のどかな道。本格的サイクリストが多い所だと、私のようなシロウトは、猛スピードで抜かれてハラハラする事があるが、この道はそんな事はない。秋の穏やかな空気を楽しみながら、多摩湖に隣接する狭山公園に到着。
自転車道そのものは、ここからは直線ではなく、多摩湖をぐるりと一周する12kmほどの道になるらしいが、それを走っちゃうと、私の体力の限界を超えそうなので、今回はパス。
とりあえず公園の中に入り、多摩湖を目指す。進んでいくと、左側に大きな登り傾斜。どうやらその先が湖のようだ。左に曲がってすごい傾斜を登るが、最後の方は歩いて上る。年寄りは無理してはいけませぬ。
多摩湖と富士山! 素晴らしい眺めだ。全景を入れようとすると。こうなる。
左の方に富士が見えるでしょう。これは多摩湖の東のはずれから見た景色という事になる。昭和の初期に人工的に作られたと考えると、驚きを隠せない。
この写真を撮っているのは、東湖岸の大きな堤防の上という事になるが、堤防の、湖と反対側の下はこんな感じ。
さわやかな秋の景色。もっと左の方には「西武園ゆうえんち」がある。
多摩湖まで来たのだから、当初は予定していなかった狭山湖も見て行こうかな―という気になってしまった。予定より距離が延びるが、ま、大丈夫だろうという事で、狭山湖を目指す。
部分的に自転車道の周回コースを進んでいたら、急にこんなものが現れて、びっくり。
西武ドームだ。好天の陽射しを受けて輝いている姿は、今まで見てきた自然風景とは別物で、なかなかのインパクトだった。
そこをもう少し進むと、今度は観音様。
真言宗の山口観音。金乗院(こんじょういん)が正式名称で、かなり古くからあるようだ。千手観音(せんじゅかんのん)で有名で、名前を聞いた事はあった。
ドームの次はお寺。面白い所だ。
ほどなく、狭山湖に着く。
ここからは富士山は見えなかったが、やはりすがすがしい景色。
少し強めの風が湖面を揺らすが、暑がりの私が自転車に乗る場合、これぐらいがちょうど良い。
この近くには昔、「ユネスコ村」という、世界の建物を模したものが建ち並ぶ施設があった。おそらく半世紀以上前、私が幼児だった頃にも来た事があると思う。
私の生活圏からそう遠いエリアでもなく、西武ドームがまだ西武球場だった頃に来た事もあるし、遊園地にも来た事がある。
しかし、この歳になって、自転車で来る事になるとはねぇ…。
その後、所沢市外に下り、蕎麦屋で遅い昼食。
そこから約20km、総距離57kmで、無事帰宅した。私にとっては最長距離になった。
人出は多いが誰もがマスク。散歩の人もランナーも自転車の人も。
そういった意味では、まだ日常が帰ってきたとは言えないが、ま、仕方がない。
みんなが、本当に心から安心して旅や外出を楽しむ日々が待ち遠しいなぁ。