保健師のビタミン

映画にみる(発達)障害

第2話天才的能力故の憂い

『レインマン(アメリカ、1988)』
出演:ダスティン・ホフマン、トム・クルーズ、ヴァレリア・ゴリノほか。

「自閉症といえばこの1本」というぐらいに有名な映画。
第61回アカデミー賞と第46回ゴールデン・グローブ賞、さらに第39回ベルリン国際映画祭においてそれぞれ作品賞を受賞しているので、作品としても(むしろその方が)有名な映画です。日本では最近、椎名桔平と橋爪功主演で舞台化(再演)されていましたね。

この映画でダスティン・ホフマンが演じている兄のレイモンドは重度の自閉症と診断されていますが、同時にサバン症候群とも医者にいわれています。

このサバン症候群というのは「自閉症や知的障害者の中で、その認知的・知的水準とはアンバランスな(つまり高度の)特異的機能・能力を有する人々」のことをいいます。

この特異的機能とはカレンダー計算能力(○年×月△日は何曜日?という質問に瞬時で答える)やlightning calculation(数桁同士の掛け算を瞬時にして暗算できる)、音楽能力(一度きいた音楽をほぼ完全に再現できる)、絵画能力(一度みた風景を再現できる)などが代表的です。

実際にこの映画のモデルになったKim Peekという人は知的障害者ですが、一度見たもの(文献等)はすべて覚えてしまうと言う驚異的な記憶の持ち主です。
参考:ウィスコンシンメディカルソサエティ

このような能力は障害を伴わない人にもみられることから確定的なことはまだいえないのですが、世界中の研究者がこの驚異的な能力がなぜ発達や精神に障害を持つ人に多く見られるのか、ということに関心を持っています(私もそんな内の一人です)。

しかし映画にもあるように、このような特異的な能力は我々が「すごい!」思うだけで(トム・クルーズ演じる弟チャーリーが兄の能力を使ってカジノで大儲けしたように)、当の本人にとってはもっと大切にしたいもの(変わらない日々の生活)があるのですね。

そういえば、以前に山登先生がこのコラムでご紹介していたダニエルタメット氏「僕には数字が風景に見える」もサヴァン症候群の方ですね。併せてどうぞ。

著者
伊藤 匡
東京大学21世紀COE「心とことば- 進化認知科学的展開」特任研究員
1971年兵庫県生まれ。臨床心理士。日本では数少ないサバン症候群の研究を行う傍ら、精神科クリニック・スクールカウンセラーなどを現場として主に児童・思春期の精神保健に携わる

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